２０００（平成１２）年 真宗の生活 ５月 【信心】
＜だまされてたまるか＞
宗教を信じられないという、ある現代的懐疑精神旺盛な人物からの問いかけです。
「あなたは真宗門徒だというが、どうして真宗を信じることができるのですか？ あなたには釈迦や親鸞が言ったことがなぜ真理だとわかるんですか？ 正しいから信じているのではなくて、信じているから正しいとしているだけではないですか？」
この問いに、私はどう答えることができるでしょうか。そもそも私は真宗を信じているといえるのか。信じたい、信じなければならないと自分を言いくるめているだけではないのか。自分の心の中を覗けば迷いだらけ疑いだらけで、「地獄一定」の覚悟も「弥陀の本願まことにおわしまさば…」という確信もありません。
「信心とは、疑わないことではない。疑いようがないということだ」
これはある先輩からうかがった言葉です。本願とはわれわれの宗教心を成就する道理であつて、道理を疑ったところで、道理自身は痛くも痒くもない。むしろ「疑ってはならない」と自分で決めつけることこそ、仏智を疑う思い上がりだ、というのです。
『仏説無量寿経』に説かれている第二十願の「不果遂者の願」は、衆生を必ず目覚めに導くと誓っています。これは、妄想はいつか真実の用きによつて破られる、不安や疑いとして表れているあなたたちの宗教心自身が、あなたたちを偽物に安住させてはおかないのだ、という確信の表明でしよう。
この「果遂の晢い」は、「だまされてたまるか」と身構える必要も、「疑ってはならない」と無理する必要もないのだと、私に教えてくれています。いま「迷いも歩みのうちだ」という言葉に促されている自分がいます。
『真宗の生活 ２０００年 ５月』【信心】「縁を生きる」
