①別院外観【悲しみを生きる力に】

「誰もが経験する死別。しかしその悲しみは人ぞれぞれです。大切な方を亡くして抱える深い悲しみは、人間としてごく当たり前のこと。だからこそ、その悲しみを大切にしたい。悲しみや苦しみを無くすことは簡単なことではない。しかし、それを大切に受け止めていくことはできるのではないでしょうか。そしてそこに開かれる世界があります。」(値遇の会パンフレットより)

 

【社会貢献の思いを地道な取り組みに】

東本願寺沖縄別院では、毎月第3木曜日に大切な人を亡くした人々のつどい「値遇の会」を開いています。沖縄別院が設置される前から、「沖縄の真宗寺院にできる社会貢献をしたい」という思いが、関係者の間で大切に温められていました。その思いが実り、活動の一つとして、グリーフワークの会を同朋の会として位置づけ、「値遇の会」という名で場が開かれました。2011年7月から取り組みを始めて今年で5年が経過します。当初は、不定期の開催でしたが、医療関係者やカウンセラーとの連携がうまく取れるようになり、定期的な開催となりました。同じ目的で活動を続ける「グリーフワークおきなわ」(任意団体)とも連携し、グリーフワーク、グリーフケアについて研鑽し一般向けの講座も開催されています。いろいろなご縁がつながって、現在は、緩和病棟からの紹介が増えてきたそうです。

 

【様々な問題を傾聴する】

毎回の参加者は0人から4人ほど。誰も参加されないときは、別院の職員により勤行と法話が執り行われます。会の日程は、自由参加の仏教儀式の時間(勤行と法話)とグリーフケアの時間の2本立て。開催日以外にも個別カウンセリングを受け付けています。大切な人を亡くした喪失感に寄り添い、聞き続けていくことが活動の基本ですが、死から派生する様々な問題についても聞き取っていかなくてはならないそうです。

深い悲しみの淵にある人に届く声は、同じく死別の悲しみを抱え生きている人の発することばなのです。それは大切な人と別れたことを通して、あらためてその故人に出遇い、その人をとても頼りにし、拠りどころとしていた自分自身に出遇う機縁になるのです。

 

【悲しみを話せる場】

「値遇の会」に参加された方からは、「話して楽になった」、「もっとほかの方の死別体験を聞きたい」という声が聴かれます。

昨今、葬儀や法事などの仏事が簡素化される傾向がありますが、死別の悲しみを率直に話せる場を求めている人はたくさんおられるのです。

 

【グリーフケアの会のルール】

  • 聞くことを大切にする。(人の話は最後まで聴き、内容を否定したり、議論しない)
  • 話したくない場合は話さなくてよい。
  • 途中で帰ってもよい。
  • 疲れたら外で休んでもよい。
  • 聞いたことは外では絶対に話さない。
  • 時間を共有するため、長く話しすぎない。
  • 悲しみは人それぞれ、悲しみ比べはしない。

 

【安心して語れる場を】

値遇の会の関係者は、死別の悲しみを共有するとき、私のまわりのたくさんの人たちは、実は深い死別の悲しみを経験しており、その悲しみと共に生きているのだということに気付かされます。死別の悲しみを通してあらためて隣に生きている人と出遇い、何を拠りどころとして生きていくのか、参加者が安心して語り合える場となることを願って開催しています。その悲しみや経験を語り、経験者から聞くということが求められているのだと話されました。

 

普段の生活で、私たちが本当に苦手にしていることなのかもしれません。

現在、全国的にこのようなグリーフケアの取り組みが広がっています。

「お寺さんとの関係は悪くはないのですが、近い存在だからこそ、なかなか話せないこともある」

他県から訪れる人や相談の電話をしてくる人など、事例も様々だそうです。

 

沖縄別院だからこそ、開かれる場「値遇の会」。

いま、静かな注目を浴びています。

 

しんらん交流館公開講演会のご案内

現代社会のすがたを見つめる、生老病死をテーマとした講演会を月に一度開催します。7月は「グリーフケア」を考える場にいたします。長年、グリーフケアに携われてきた尾角光美さんをお呼びして、しんらん交流館公開講演会が開催されます。是非ともご来聴ください。

〔日時〕 7月21日(火) 18時30分~20時

〔会場〕 しんらん交流館2F 大谷ホール

〔講師〕 尾角光美(おかく てるみ)さん 一般社団法人リブオン代表

〔講題〕 なくした人とつながる生き方

④グリーフケア写真