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里雄康意(さとお こうい)

2016年を迎えるにあたり、里雄宗務総長に今の心境をお聞きしました。

 教学の振興と教化の推進

——2015年を振り返って、どのような年でしたか。

総長 まず思い起こされるのは、「真宗教化センター しんらん交流館」の実動です。それは宗門が「教学の振興」「教化の推進」に軸足を置いた宗務に質的転換をはかっていくために、非常に重要な取り組みであると考えています。

同朋会運動五十年の節目となる2012年に、宗門は「人の誕生」と「場の創造」という教化の指針を掲げました。聞法者を育む「場」を創ることで、お念仏の教えに生きんとする「人」を生み出し、そこからまた「場」が開かれる。このような歩みを展開していくうえでは、時代の問題を受けて試行錯誤しながら、常に同朋会運動の原点に立ち返るということが大切だと思っています。

そういう歩みの中で生まれたのが「真宗教化センター しんらん交流館」です。お寺が聞法の場となり、お念仏に生きる人を生み出す場となるよう、一つひとつのお寺にまなざしを向け、宗務所・教務所・教区・組が連携して、お寺とお寺、人と人をつなぎ、情報を共有する。お寺が主体的に教化活動に取り組んでいただけるような環境作りを進めています。

そして、同朋会館・研修道場をはじめとする真宗本廟奉仕施設の改修、真宗大谷派の学事施設である大谷専修学院(山科学舎)の改築といった諸施設の環境整備を進めた年でもありました。しかしながら、環境を整えたらそれで終わりではなく、それらが「教学の振興」と「教化の推進」という内実を伴ったものにしていかねばならないと、取り組みを進める中であらためて感じています。

 「御仏事」としての御修復

——約10年にわたる真宗本廟両堂等の御修復が大詰めを迎えています。御修復事業の完了を目前にして、どのようなことを思われますか。

総長 宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌の特別記念事業として2004年より進めてきました御修復は、単なる営繕事業ではなく、念仏相続の「御仏事」として取り組まれ、「私にとって真宗本廟とは」という問いを確かめていく機縁でありました。その願いに賛同いただいた全国の寺院・門徒の方々からの多大なるご懇念によって滞りなく進めることができましたこと、まずもって厚く御礼申しあげます。

真宗大谷派宗憲(前文)に「わが宗門の至純なる伝統は、教法の象徴たる宗祖聖人の真影を帰依処として教法を聞信し、教法に生きる同朋の力によって保持されてきたのである」という言葉がありますが、このたびの御修復は真宗本廟が「同朋の力によって保持されてきた」ことを実証するような大事業であったと、完遂を目前にしてあらためて思います。

——再建時さながらの姿をご覧になって、どのように感じられますか。

総長 御修復がなされた御影堂・阿弥陀堂・御影堂門を見渡すと、その荘厳な佇まいに、感慨深いものが込み上げてきます。細部に至るまで職人の心が行き届いていて、親鸞聖人のおうちを造る、阿弥陀仏の浄土を表現するのだという思いが、細工の一つひとつから訴えかけられているような気がします。

親鸞聖人まします念仏の道場を次の世代に受け渡していく大事業を終えるにあたり、本年3月には御本尊還座式、11月には真宗本廟両堂等御修復完了奉告法要を執り行います。ぜひお参りいただき、先人の願いとその技術の素晴らしさにふれていただきたいと思います。

『同朋新聞 2016年(1月)』より

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