■仕事を作り地域とつながる

 先日テレビを観ていたら、学生服や体操着、柔道着などのリサイクルショップを創業された女性社長が出ておられました。

シングルマザーとして小さい子どもを3人育てながら起業され、様々な苦労や困難を乗り越え今では全国的に注目される社長。テレビ画面からでもその優しさや温かさが伝わってきます。
「想い出が詰まった大切な制服を必要な方につなげ、地域のお母さん・お父さんの役に立ちたい」という思いが起業の原点だそうです。

 また、買い取った制服のクリーニングや修理の仕事は地域の老人や知的障がい者が通う作業所に依頼しているそうです。新たに仕事を創り出し地域とつながっていくそのやり方は素晴らしいですよね。

 この番組を見ながら、同じ組内(京都教区山城第1組)の坊守さんの取り組みを思い出しました。その坊守さんは、仏具のお磨きを「上京ワークハウス」(京都にある知的障がい者の共同作業所)に依頼し、お磨きの手順を仕事として行えるレベルまで丁寧に教えられました。ゼロから新しく何かを生み出すのはとても労力のいる作業です。是非ともお話を伺いたいと思い取材してまいりました。

東光寺坊守の藤澤順子さん・京都教区通信員■共同作業所との出会いと連携

 東光寺は京都駅から徒歩3分、東本願寺の目の前にある寺院です。坊守の藤澤順子さんは50代半ばのパワフルで明るく分け隔てなく人と接する気さくな女性です。まずは上京ワークハウスとの出会いについて(たず)ねました。

「20年ほど前に、上京ワークハウスの作業を手伝ったのがきっかけでした。週2回のボランティアで、その時は牛乳パックから紙すきをしてハガキを作っていました。ビーズを計って袋詰めをしたり、箱を作ったり、色々しました」

 こうして上京ワークハウスに通っているうちに、作業員たちとも顔馴染みになり、お互い色々な話をしながら仲良くなっていったそうです。その中で、順子さんはあることに気づかれたそうです。

「知的障がい者の中でも、自閉症の方が多かったんですね。興味のあることに対してはものすごく集中して取り組む姿を見て、きれいにしたいという気持ちがあれば、お磨きもお願いできるのではないだろうかと(ひらめ)きました」

 東光寺でのお磨きは、主に前坊守と順子さんが担っていたのですが、前坊守亡き後は順子さんがひとりで続けていたそうです。ただ、ひとりでやるのは大変だったこともあり、上京ワークハウスにお磨きの話を相談をしたところ「是非やりましょう」とのお返事をいただけたそうです。

 こうして始まったお磨きの委託ですが、条件は話し合いの末、時間は午前9時から午後3時(食事休憩1時間を含む)まで、4~5人(職員1人を含む)に従事してもらい、料金は5,000円に決まりました。

「料金が安かったので、その分こちらで昼食を用意しようと思っていたんですよ。しかし、弁当持参で来られたので、今は10,000円でやっていただいています」

 最初は、誰ひとりお磨きを経験したことがないという状況の中、順子さんはその手順を丁寧に教えらました。

 お磨きは、まず、布につけた金属磨き液をつけ布で仏具を磨き上げます。汚れがひどい場合は20~30分磨き続けることもあります。
次に、表面や溝に白い液の残りがついているので、きれいな布で仕上げ拭きをします。この作業の繰り返しなのですが、なかなか思い通りには動いてもらうことはできなかったそうです。

「ひとつのことに集中するあまり、磨くことはできても、仕上げ拭きができなかったり、仏具の模様の隙間についた磨き液の残りを取ることに集中しすぎて他のことができなかったり。時間以内に終わらないこともあったので、そのような場合は残りは自分でしました。手順をきちんと覚えてもらうことは大切なことです。教えるということの大変さを実感しましたね。
すべての作業を覚えてもらうのには4年かかりました。今では白くなった溝を竹串で取ることもできるし、金香炉は分解して灰をこぼさないように、といった細々とした指示にも対応できるようになりましたよ」

 手際の良さには個人差があるそうですが、みんなで補い合って作業をする仲間だという意識が、このお磨きの仕事を完成させているそうです。

ワークハウスおみがき隊・京都教区通信員■受け入れる勇気

 順子さんは、他のお寺でもこの取り組みが広まってくれたらとの思いから、「ワークハウスおみがき隊」と名づけ、チラシを作り、坊守会などで配布・宣伝されました。

「興味を持ってくださる方はおられるんですが、どのように接したらいいのか分からないという理由で躊躇されます。構えないで自然に接していただければ十分ですと答えていますが難しいですね。体調によって大声を出したりすることもありますが、一緒に同行される職員さんが対応されますしね」

 実は、私が住職を務めるお寺でも、前坊守が興味を持ったのをきっかけに、ここ数年、年に1度、「ワークハウスおみがき隊」にお願いし、非常に助かっています。仲間同士で和気あいあいと作業されており、一緒に手伝わなければならない作業もないので、今では完全にお任せしています。

 お磨きという具体的な仕事を通し、今まで接点がなかった人たちとつながることは素晴らしいことだと感じています。私に限っていえば、「ワークハウスおみがき隊」との関わりは、年に1度、しかも半日のことなので、つながりといってもささやかではありますが。

 他にも順子さんは、念珠の組み立て作業のアルバイトの募集を見かけた際に、上京ワークハウスとの協力の話を持ちかけたそうです。しかし、首を縦にはふってもらえませんでした。それでも順子さんは次のようにおっしゃいます。

「お磨きだけではなく、念珠の組み立て作業も、彼らの能力にぴったり合っていると思います。よく周りを見渡してみると、彼・彼女たちが力を発揮できる仕事が他にもありますよ。私たちがもう少し受け入れようとする気持ちを持てば、仕事というものを通して、地域がつながりあう状況が広がっていくのではないかと感じています」

 地域とつながるお寺。今回の取材では、知的障がい者共同作業所と連携し、「お磨き」を仕事としてお寺の外に手渡すことでつながる、という具体的な例を見せてもらえたように感じました。少しでも興味を持たれた方は、順子さんに連絡を取ってみてはいかがでしょうか。

(京都教区通信員 本多 真)
東光寺(☎ 075-371-7589)