生老病死の問いを様々な現場で考え、表現している方を講師に迎え、「老病死」を抱える身として生まれた私たちの存在とはどういうものなのか、そのことをともに考える「しんらん交流館公開講演会」

このたびは、小説『あん』の主人公「徳江さん」のモデルとなった、上野正子さんと著者ドリアン助川をお迎えし、対談を行いました。IMG_0382

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ドリアン助川さんは、ハンセン病との出会い、小説『あん』が執筆される経緯をこのように語られています。1996年に「らい予防法」が廃止されて、ハンセン病の患者たちの人生がメディアで浮き彫りになった。子供の時に発病して療養所から出られず、70歳、80歳になった人たちにも絶対、生まれてきた意味があるはずだし、「人の役に立たないと」という言葉の暴力性を感じた。ハンセン病の療養所を背景に、本当の命の意味を書こうと誓った。でも、患者の手記を読むと、壮絶すぎて、心がやけどしたようになる。患者でもない人間が、無理かな、おこがましいかな、と、手が出ない状況が続た。
そんな中、2009年2月に埼玉県所沢市で呼ばれたライブに、お年を召された男女3人が最前列にいた。終わって聞いたら、ハンセン病療養所の「多磨全生園から来ました」と言う。そこで初めて、本当の元患者さんたちと出会った。「療養所に遊びにいらっしゃい」と誘われて行って、そこでハンセン病の歴史などを始め、いろいろ教えていただきました。
話をしてもらって、発見が相次いだ。ハンセン病の知識がほとんどない俺みたいな奴が、患者さんと出会うことで差別の歴史を知り、最終的にはハンセン病も関係なく、人間って、生きている意味って何なんだと問いかけられればいいと思った。

このたびの講演会では、ハンセン病療養所で甘いものを作り続けたことを通して、正子さんと徳江さんの「生きる」ことについてお話しいただきました。

●開催日時 2019年1月23日(水)18:00~19:30

●講   師 上野正子さん【星塚敬愛園副自治会長】✖︎ドリアン助川さん【作家・朗読家】
●講   題 正子さんと徳江さんハンセン病療養所で甘いものを作り続けたわけ

【上野正子さんプロフィール】
1927年、沖縄県石垣島生まれ。

1940年に沖縄県立第二高等女学校に入学するも、ハンセン病を発症し同年12月に星塚敬愛園に入所。

1998年のハンセン病国家賠償訴訟(※らい予防法違憲国家賠償訴訟)では第一次原告団13名のひとりとして名前を連ねた。小説『あん』(ドリアン助川著)の主人公、徳江さんのモデルとしても知られる。

2013年より敬愛園自治会副会長。各地での語り部活動にも精力的に取り組んでいる。
 http://leprosy.jp/people/ueno/

【ドリアン助川さんプロフィール】
1962年東京生まれの神戸育ち。作家・朗読家。早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。日本ペンクラブ理事。長野パラリンピック大会歌『旅立ちの時』作詞者。

放送作家を経て、1990年バンド「叫ぶ詩人の会」を結成。ラジオ深夜放送のパーソナリティとしても活躍。若者たちの苦悩を受け止め、放送文化基金賞を得る。

同バンド解散後、2000年からニューヨークに3年間滞在し、日米混成バンドでライブを繰り広げる。帰国後は明川哲也の第二筆名も交え、本格的に執筆を開始。著書多数。

小説『あん』は河瀬直美監督により映画化され、2015年カンヌ国際映画祭のオープニングフィルムとなる。また小説そのものもフランス、イギリス、ドイツ、イタリア、レバノン、ポーランドなど11言語に翻訳されている。

2017年、小説『あん』がフランスの「DOMITYS文学賞」と「読者による文庫本大賞(Le Prix des Lecteurs du Livre du Poche)の二冠を得る。
【ハンセン病と真宗】
http://www.higashihonganji.or.jp/release_move/leaflet/pdf/hansen_disease_1.pdf