大和大谷別院の山門に設置された本箱
大和大谷別院の山門に設置された本箱


●別院を地域に開く取り組みとして●

奈良県大和高田市にある大和大谷別院では、2019年5月から「小さな図書館(リトルフリーライブラリー)」という取り組みがはじめられています。

 

別院の親鸞聖人750回御遠忌法要を経て、別院の教化委員会が活動を開始しました。委員の中から別院を地域に開く取り組みとして提案されたのが、この「小さな図書館」だったそうです。「無理なくできることからはじめてみよう!」ということで、各委員さんの賛同を得て、取り組みがはじまることとなりました。

 

この取り組みを提案された教化委員の毛利晴彦さん(大阪教区第25組德藏寺)は、『マイクロ・ライブラリー -人とまちをつなぐ小さな図書館-』(学芸出版社)という本を参考に、別院が地域の人々とより深くつながりを持てるようにとこの取り組みを提案されたそうです。

 

別院の前の通りは小学生の通学路にもなっており「絵本等をきっかけに、子どもたちにもお寺と縁を持ってもらいたい」との思いもあったそうです。

 

左から毛利さん、畠中さん、輪番の外川さん、列座の神保さん
左から毛利さん、畠中さん、輪番の外川さん、列座の神保さん

●世界にひろがる「小さな図書館(リトルフリーライブラリー)」●

小さな箱に納められた本を地域の方々に無償でしかも、手続きなしで貸し出す「小さな図書館(リトルフリーライブラリー)」は、2009年にアメリカではじまった取り組みです。今や全世界にその輪がひろがっています。公式サイト(https://littlefreelibrary.org/)では、登録された全世界の「小さな図書館」が地図上で検索でき、大和大谷別院の図書館も検索できるようになっています。本部に登録されると「Little Free Library.org」のプレートが送られ、個別の設置番号も与えられます。

 

リトルフリーライブラリーの利用方法
リトルフリーライブラリーの利用方法

●教化委員さん手づくりの本箱●

本箱は、陶芸家でもある教化委員の畠中光炎さん(大阪教区第27組浄宗寺)が、手づくりで作られました。山門の柱にピッタリと合うサイズで、将来的には照明もつけられるように工夫されています。このあたりのこだわりにも、教化委員さんの熱意が感じられます。

 

本箱には当初50冊程の本を設置していたところ、新たに本を寄贈してくださる方もあって、蔵書は徐々に増えているということです。すでに本箱には奥までびっしりと本が置かれていました。

 

手づくりの本箱には、リトルフリーライブラリーのプレートが取り付けられている。
ぎっしりと本が詰まった手づくりの本箱の上部には、リトルフリーライブラリーのプレートが取り付けられている。

この大和大谷別院での「小さな図書館」は、奈良県初の取り組みということもあり、新聞に取り上げられたことから、毎日放送夕方の情報番組『ミント!』でも紹介されました。放送をきっかけに、お参りの際に地域の門徒さんから「図書館に入れてください」と本を預かることもあるそうで、取り組みにさらなる広がりが生まれつつあります。

 

蔵書には、オリジナルのスタンプが押されています。
蔵書には、オリジナルのスタンプが押されています。

●幅広い年齢層の利用者●

通学途中に本を手に取る小学生は「自分の知らない本があって、楽しい」と話してくれています。また、この「小さな図書館」をよく利用されている70代の女性は、「(お寺の境内で)安心して本が読める」と語り、境内の日陰に座って本を読んでおられます。また、その方は別院で月1回開かれている「お勤めに学ぼう会」の一つである『正信偈』の書写の会にも参加されるようになったということで、図書館の取り組みが、教えへの縁づくりにもなっている様子です。

 

その他、別院のお朝事にお参りされる方が利用されたり、地区の有線放送で図書館の存在を知った地域の方が利用する姿もあり、利用者も徐々に増えているとのことです。

●別院での今後の教化事業への展望●

この取り組みを提案された毛利さんは、元教員でもあり、地元の小学校で読み聞かせのボランティアもやっておられ、「小さな図書館」を足掛かりに別院でも読み聞かせをやってみたいと、これからの展望についてお話くださいました。

 

また、輪番さんや列座さんからは「夏に子どもが楽しく集まれる行事を盛り込んでいけたら」との思いも聞かせていただきました。

 

別院を大切に思う教化委員会の方々のアイデアから、歴史ある別院(1593年に本願寺12代教如上人により開創)が、現代の地域にとって、かけがえのない場になる動きがはじまっています。

リトルフリーライブラリーに収められたお勧めの本を手に
リトルフリーライブラリーに収められたお勧めの本を手に