遠足

 

遠足 (えんそく)」 木下今朝義 (きのしたけさよし)
1996年 油彩・キャンバス 45.5×53.0cm
木下今朝義さんは、菊池恵楓園で実に83年を過ごされました。機関紙『菊池野』に、「土を愛する気持ちと野菜をつくることに生甲斐を感じ」と寄稿されているように、長い間恵楓園で野菜などをつくられていた木下さんは、野菜づくりをやめられた60歳頃から絵を始められたようです。6歳でハンセン病を発病した木下さんが学校に行っていたのは1年足らず。その中で楽しい思い出はほとんどなく、いじめられて、先生までも憎かったと後に語られています。満開の桜を観に列をつくって菜の花畑を歩いた遠足は、仲間に入れてもらえなかった木下さんが、仲間と行動をともにした唯一と言ってよい記憶であり、82歳のときにこの作品を描かれました。当時の木下少年に、光あふれる春の景色はどのように映ったのでしょうか。「らい予防法」が廃止された年に描かれたこの作品は、これからも恵楓園の宝として存在し続けることでしょう。

文:藏座江美さん(一般社団法人 ヒューマンライツふくおか理事)