ほとけの子 親鸞さまは、今からおよそ800年前、京都にお生まれになりました。9歳のときに両親と別れ、その後、ただ一筋にお釈迦さまの教えを学びながら生きられました。29歳のとき、先生である法然上人と出あわれます。そこで一生を決定する大切な教えを聞くことができました。それが「浄土真宗」の教えでした。

「浄土真宗」とは、「浄らかな世界(浄土)を求めて生きる」ということです。親鸞さまは法然上人と出あってから、生涯をかけて「浄らかな世界」を求め、また多くの人びとにそのことを教えられました。

私たちの住んでいるこの世界は、どんな世界でしょうか。私たちの世界には、いろいろな人が住んでいます。女の人や、男の人、お年寄りや、小さな子どもがいます。身体の丈夫な人、あまり丈夫ではない人、勉強やスポーツが得意な人、苦手な人、お金持ちの人、そうではない人など、さまざまです。

そのような中で私たちは、他の人に負けないよう、勉強をがんばったり、スポーツをがんばったりして生きています。そして、少しでも賢く強く、偉くなることを目指しています。私たちの世界はそのように、他の人との競争の上に成り立っています。

たしかに、そうやってがんばって生きることも大切なことかもしれません。しかし、親鸞さまが求められた「浄らかな世界」とは、それとはまったくちがうものでした。

親鸞さまは、さまざまな人が住んでいる世界の中で一番大切なことは、一人ひとりが、お互いに尊敬しあい、助け合いながら生きることだと言われます。男の人も女の人も、強い人も弱い人も、それぞれがそれぞれの姿かたちで精一杯に生きています。その一人ひとりがお互いに助け合いながら生きることで、お互いが本当に大切な人だと敬い合える、そういう世界を「浄らかな世界」と言われるのです。

そのような「浄らかな世界」とは、どこにあるのでしょうか。それは決して遠いところにあるのではありません。みんながお互いを大切に想い、助け合いながら生きることができれば、そこが「浄らかな世界」となるのです。お家でもいい、学校でもいい、できれば世界中がそうなればいい。みんなで「浄らかな世界」を求めて生きてくださいと、親鸞さまは教えてくださっています。

「ほとけの子 -親鸞さまー」

 『浄らかな世界を求めて』(大谷大学准教授 木越 康)