DSC014087月23日、北海道教区の根室別院を会場に、コミュニティデザイナーの山崎 亮さんを講師にお招きして、ウェイクアップセミナー「みんなの生き方ラボ」の第3回が開催されました。

根室別院でのウェイクアップセミナーは、山崎 亮さんが代表を務めるStudio-Lと業務委託契約を締結し、いつまでも幸せに暮らすことができる地域コミュニティの構築を根室別院が扇の要となって発信していくことをコンセプトにはじめられた取り組みです(詳細は『真宗』8月号をご覧ください)。

 

【これまでの流れは??】

振り返りこれまでの流れとしては、まず5月27日に山崎さんに根室別院へご出講いただいて、「寺からまちへ!~お寺から始めるコミュニティデザイン」のテーマのもとに、キックオフ講演会を開催しました。別院のご門徒や地域の方々、地方自治体の行政機関の方々などが参加される中、山崎さんが取り組んできた地域コミュニティ構築の取り組み事例などが紹介され、地域の活性化を促す取り組みにおいて、そこに暮らす人々が何に幸せを感じて生きるのか、地元を愛して生きていくために必要なことは何かなどのお話をいただきました。その講演終了後に、このたびのウェイクアップセミナーの取り組みが紹介され、多くの反響を得ることとなりました。

そして、別院の輪番や列座の皆さんによる地道な広報活動の展開を経て、6月23日に第1回、翌24日に第2回のセミナーを開催する運びとなりました。

第1回は、「大切なもの・こと・ひと」、「やってみたいこと」をポイントとしてアイデアを絞り出すワークが実施され、第2回は、「自分が一番やりたいこと」をポイントとして、第1回のワークで寄せられたアイデアを絞り込む作業を行い、「健康づくり」・「演劇」・「音楽」・「食」・「ものづくり」・「学び」・「カフェ」・「交流」という8つのテーマごとの作業チームが形成されました。

Tシャツ第2回のセミナー終了後、参加者の方々には、事業計画をさらに煮詰めることやチームTシャツのデザイン作成といった宿題が示され、各チームともに自主的に別院などに集合して話し合いを重ねてきました。こうした自主的な取り組みは、参加者一人ひとりの意識を途切れさせることなく、各チームともに1カ月ぶりにワークショップを実施するとなっても、あっという間に話し合いを深めていくことができるほど強い連帯感を生むことにもつながっています。

チームによっては既にチームTシャツが完成し、早速、おそろいのTシャツを着てワークに臨むチームもありました。

【自分の楽しみが友人や別院にとっての喜びになる取り組みを】

山本そして、第3回となる今回のセミナーでは、まずは第1回及び第2回のワークの振り返りを行い、続いてStudio‐Lの山本 洋一郎さんから第3回のワークの視点についてご説明をいただきました。

山本さんは、日本人の平均寿命が大幅に伸び、近い将来には「人生90年」と言われるような時代を迎えようとする中、退職後の余生を過ごす時間は、これまで想像してきた以上に長く、就労していた期間と同等の時間を過ごすことになることを指摘されました。そして、人生の最期を迎えるその瞬間に、「ありがたい、幸せな人生だった」と感じられるような素敵な人生を生きるには、如何なる余生を過ごすのか。そこには、①家族以外にも共なることができる友人がいること、②友人とともに喜びや楽しみを分かち合えるような楽しみがあること、③その楽しみを味わうために自分が主体的に関わることの三つの要素があると述べられました。

そこで、第3回のワークでは、第1回及び第2回のワークで作成した事業計画の内容について、先の三要素を意識しながら「人生90年時代」を迎えようとする中で①自分が楽しめる、②一緒に関わる友人も楽しめる、③活動の場所となる別院に有用な影響を与えるという三点をすべて満たし得るようなものとなっているかを点検する形で事業計画の磨き上げ作業を行いました。

特に3番目のポイントである別院に有用な影響を与えるという点について、スタッフとの打ち合わせの中で、山崎さんは、第1回や第2回のワークでは、まずは自分にとって何が楽しくて何が学びになるのかを感じ取ってもらう点に注視してきましたが、今回のプロジェクトの目的や方針を考えれば、参加者の方々が形にしようとしている計画が、計画を運営する参加者以外の人々や、場所を与えてサポートをしてくださっている根室別院や別院の方々にとってどのような利益になるのかを考えなければいけませんと述べられました。

別院が何に悩んでいるのか、参加者の方々の取り組みが、その悩みに寄り添い応答するような要素を持っているのか、そういった意識を持ち続けて参加していただくことによって、今回のプロジェクトが、別院という場を地域に開き、コミュニティ再興の要になることの意義を表現することにつながるからこそ、重要だと押さえられたのだとスタッフは真剣に山崎さんの声に頷き、ワークの進め方についても意識をもって取り組んでおられました。

 

【チームの意思を動きの中で確かめる】

ワークそして、第3回セミナーの終わりを迎えようとする中で、新たな取り組みの一つとして、第4回のセミナー終了直後の8月29日(土)に、これまで各チームで作成してきた計画の中から一つをチョイスして、実際に別院を会場として実験的に実施してみることになりました。

この取り組みは、各チームで考えてきたことを実施する中で、計画の改善点や修正点を具体的につかみ取り、計画の磨き上げをより具体的に行うことにも繋がるものです。また、第3回のワークの視点にある「自分」・「友人」・「別院」の三者の幸せが重なり合うような計画を組み立てていくためのトレーニングにもなる取り組みです。

早くも具体的な動きに着手することに驚きを隠せない参加者もおられましたが、既にともに考え取り組む仲間がいるからこそ、すぐに具体的な計画実施に向けた準備の内容や打ち合わせの日程調整、準備に向けたスケジュールの構築などの検討に入り、すぐにでも動き出さんとするほどの意欲を感じさせる方も多くおられました。

 

【「遊び」とは偏らず捉われない一生懸命な生き方】

輪番第3回セミナーの閉会に際し、根室別院の小町 保雅輪番からのご挨拶では、「今日は、「自分」・「友人」・「別院」の三方が一致するような企画が大事だとお話をいただきました。これは、どこか一方に偏りがあるのではなく、また一方にだけ捉われることでもない、そういった企画が大事だと教えていただいたと思っています。それから、人生90年時代ということについても「生活」・「仕事」・「遊び」という三つに私たちが生きている時間を区分して考えてみることを教えていただきましたが、ここで言われる遊びというのは、生活や仕事の苦悩を受けとめて生きていけるような力を与えてくださるものだと私は思っています。「遊ぶ」というのはいい加減な様子を示すものではなくて、どこまでも一生懸命に身を尽くして取り組むことを言います。そういった姿勢で取り組む中で、初めて三方が一致するような、偏りも捉われもない、本当の意味で幸せだと言えるような生き方が実現するのではないでしょうか。」と述べられました。

「自分」も「友人」もその人々が集う「別院」も、生きてきたことに喜び、心から「ありがとう」と思えるほどに幸せな生き方とは何か、参加者の皆さんは、自分たちの計画を実現することへの意欲とともに、その大きな問いに向き合っていこうとする力強さに満ちた表情で、小町輪番の声に耳を澄ませておられました。

 

※根室別院「生き方ラボ」については、北海道教区教化委員会のブログページにも掲載されています(http://shinranweb.com/wp/)。