DSC_0124【お寺の子ども会の活性化を願って】
京都教区では、2011年度から教区教化委員会の新たな取り組みとして、「お寺の子ども会サポート事業」を開始した。この事業は、2年間を1期として、教区内から子ども会立ち上げを希望する寺院(1期につき5ヵ寺程度)を募集して、各寺院の子ども会の立ち上げを教区としてサポートすることを目的としている。

特色としては、子ども会の運営資金の助成や運営技術の伝達だけに留まらず、子ども会の立ち上げに向けた準備段階から教区教化委員をスタッフとして派遣し、企画立案や情報提供、子ども会実施時の会場設営や進行、レクリエーションの実演などのサポートを実施して、対象となるお寺の方々とともに子ども会を作り上げる点にある。
子ども会を立ち上げるためには、「やってみたい」という思いが必要不可欠ではあるが、思いを形にするためには、加えて、子ども会の運営に関わる技術や情報、運営組織の構築などが必要となる。このハードルを越えることが難しいがゆえに、子ども会の立ち上げを断念することも少なくはない。そこで、寺院が主体的にそのハードルを越えようとする時に、教区が寺院を積極的にアシストし、最終的には寺院独自で開催できるような流れを作ることを願いとして、この取り組みが開始されたという。

 

【現場のサポートを教区教化の軸に】
「お寺の子ども会サポート事業」を担当する教区教化委員会青少幼年小委員会の三品 正親主査は、

「教区の青少幼年教化事業の参加者は、年々減少傾向にありました。その減少の理由を教化委員会でも協議をして、事業内容を見直すことにも尽力してきました。しかし、本当は教区教化事業への参加者が押し出される母体となる、お寺の子ども会が衰退していることがより大きな課題だと分かってきました。そこで、教区が取り組むべきことは、お寺の子ども会を盛り上げることにあると思い、御遠忌後から、そこに集中した事業形態にシフトしました。」

と取り組みに至った経緯を述べられた。
実際に、2011年度からは、既存事業を整理統合して、教区で50年以上の歴史がある「児童大会(キャンプ等の宿泊型事業)」と「お寺の子ども会サポート事業」の2点だけに事業を絞り込んだ事業展開を進めてきた。この事業整理によって、「子ども会」の活性化に資するという目的が明確になり、子ども会を運営する「現場」の声に応答するような事業展開ができるようになったとも言われる。

 

【寺院の思いを形にする「きっかけ」が教区のサポート】
教区のサポートを受けた寺院では、子ども会が継続実施され徐々に定着しつつある。その1つが、京都教区山城第1組「隨專寺子ども会」である。
隨專寺の東口 眞由美住職は、ご門徒の子弟や近隣地域の子どもたちが、1年に1回でもいいので気兼ねせずにお寺へ立ち寄ってもらいたいと願い続けてきた。しかし、子ども会を立ち上げようにも、何から手を付ければよいのかが分からなかった。

そのような中で、教区駐在教導から「1人の参加者でもいいから」と声をかけられ、後押しを受けたことがきっかけになり、「隨專寺子ども会」を始めたそうだ。そして、会が発足して間もない頃に教区で「お寺の子ども会サポート事業」が開始され、寺院としてサポートを受けることに決めたのだという。

教区のサポートを受けた感想を伺うと、東口住職は

「教区のサポートは、受けて本当に良かったと思っています。サポートが終わった現在でも、スタッフの方がお手伝いに来てくださることもありますし、困ったときには、駐在さんや教区教化委員会のスタッフの方々が相談に乗ってくださいます。」

と。

 

【サポート終了後も継続するスタッフとの繋がり】
2015年1月に勤められた「隨專寺子ども会」の報恩講では、教区駐在教導から紹介を受けた教区内寺院の衆徒である、三品 大心さんがレクリエーションを披露した。三品さんは、現役の学生でありながら独学で大道芸を習得し、東日本大震災の被災地へも出向して、大道芸を通じて現地の子どもたちに寄り添う活動もされてきたという。
三品さんの大道芸は、単に芸を披露するだけでなく、子どもも大人も皆が参加して「遊ぶ」ことを重要視されている。子どもたちは、三品さんが繰り出す「技」に目を奪われながら、楽しそうに「遊び」の輪の中に加わっていく。そして、最後には大人までも巻き込んだ「遊び」の輪に拡大していた。

 

【ご門徒の参画が支えになる】
また、「隨專寺子ども会」の最大の強みは、子ども会の開催準備や運営、参加者の募集などにご門徒が参画している点にある。報恩講当日も、三品さんがレクリエーションの中で紹介した「けん玉」は男性のご門徒が子どもたちに遊び方を教え、レクリエーション後のおやつとして振舞われたホットケーキの準備は女性のご門徒が中心となって担当するなど、各々の知識や経験を活かして子ども会の運営に参画している姿があった。

「住職独りでは難しいことであっても、ご門徒に相談し助けていただくことができれば、取り組みを始めることはできると思います。ご門徒の皆さんは、本当に心強い存在です。」

と東口住職はいう。

どのような事業であっても、独りで抱え込むと負担と不安に押し潰されそうになって、最初の一歩を踏み出せなくなる。しかし、お寺にはご門徒という最大の協力者であり、相談相手がいる。それが、お寺に備わった大きな強みである。お寺の事業をご門徒とともに運営し楽しむこと、それが事業継続の大きな手がかりになるだろう。

サポート研修会で、子どもたちとのかかわり方を学ぶ。講師はサガエさん(佐賀枝夏文さん)。
サポート研修会で、子どもたちとのかかわり方を学ぶ。講師はサガエさん(佐賀枝夏文さん)。
全体座談。子ども会運営上での問題などを語り合う。
全体座談。子ども会運営上での問題などを語り合う。
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三品大心さんによる大道芸
皿まわしやマジック、けん玉の技は巧み!!
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