ほとけの子 彼岸会

春の彼岸は3月20日ごろの「春分の日」、秋の彼岸は9月20日ごろの「秋分の日」です。いずれも、「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように、ちょうど、季節の境目になります。そして、この日は、お日様が、ま東から出て、ま西にしずみ、昼と夜の長さが、まったく同じになります。お経には、ま西に仏さまの国があると書いてあります。つまり、しずんでゆく夕日が仏さまの国を教えてくれているのです。

ところで、私は、小学生のころ、たまたま、春分の日に日曜学校の仲間といっしょに、日本海の見えるお寺で開かれた研修会に参加したことがあります。夕食前の空き時間に、みんなについて本堂の裏から浜辺に出ていきました。ちょうど、そのとき、いっしょに行った先生が、「みんな、ちょっとおいで、ちょっとおいで」と呼んで、海の向こうをゆびさしました。言われたとおり、海を見ると、真っ赤で、しかも、とても大きな夕日が、今、まさに沈もうとしていました。だんだんと、下から少しづつ欠けてやがて見えなくなってしまいました。そして、わずかに夕焼け雲だけが、赤くそまり、それもやがて消えていきました。海の見えないところに育った私は、それを見て、とても感動しました。

そのとき、近くにいた先生が、

「きょうはね、お日さまも、仏さまの国へお帰りになる日なの。あの真っ赤なお空の向こうに仏さまの国があるの。あなたの大好きだったおばあちゃんも、あのお空の向こうの仏さまの国にいらっしゃるの」

と、言われました。それを聞いて、なんだか、胸が熱くなりました。

彼岸とは、正しくは「到彼岸」といい、迷いの世界である此岸から悟りの世界である彼岸に至ることをいいます。帰る世界つまり、仏の世界を見定めて、その教えを聞く歩みを始める日が、お彼岸です。日本人の暮らしには、すっかり溶け込んでおり、行事としては古くから「彼岸会」として勤められてきました。

「ほとけの子」 春・秋のしおり 彼岸会

『夕日 仏さまの国』 (同朋大学教授  田代俊孝)