01キャプションなし 福岡県と大分県の県境にほど近い、福岡県京都(みやこ)郡の犀川(さいがわ)地区。この地区では古くからの「講」である「犀川28日講」が開かれている。過疎化や都市化などさまざまな理由で、「講」が姿を消し、あるいは内実が変化しつつある今、いかにしてこの「犀川28日講」が開かれ続けているのか、実際に参加し、お話を聞かせていただいた。

現在、「犀川28日講」は犀川地区の14カ所の集落の持ち回りで行われている。会場は寺院に限らず、公民館などで開かれることもある。私が参加した日は花熊(はなぐま)集落の恩高寺(日豊教区京都組・吉田智照住職)で開かれた。02キャプションなし 恩高寺に着くと、門には「真宗大谷派」の旗が掲げられ、本堂にはすでに50人近くのご門徒が所狭しと集まっていた。まず全員での勤行、「正信偈・念仏・和讃」が勤まり、続いて「講」に対して授与された御消息が拝読された。そして2人の当番法中による法話が一席ずつ行われた。法話の合間、茶菓子接待と会費(200円)集めが行われるのであるが、世話人の方が持って回るお盆のなかに、ある人は手を合わせながら、ある人はにこやかに笑いながら小銭を入れていく姿は、なんともほほえましい光景であった。「講」が終わると安置された名号や御消息が大切にしまわれ、それが次の集落の世話人へと渡されていった。

持ち回りされる備品一覧
持ち回りされる備品一覧

当日、「講」終了後に当番法中であった村上匡一氏(日豊教区京都組念信寺住職)、世話人の一人である野中五郎氏からお話を聞くことができた。そこでは「犀川28日講」が徹頭徹尾ご門徒の力によって支えられているということ、寺院の住職は当番法中としてであるが、ご門徒と同じく共に参加している立場であるということを聞かせていただいた。またこのようにご門徒と住職が関わることによって、ご門徒と住職の関係が一寺院のなかだけの限定された関係から、より開かれた住職・門徒の関係へとひろがっていくのだという。実際に、この「講」の世話人の方々は、そのまま組、教区の門徒会の会員であり、真宗大谷派に対してもお力添えをいただいているのである。「門徒離れ・寺離れ」など叫ばれて久しいが、我々が失ってきて、そして今求めているものが、この「犀川28日講」を存続させているものではないか、そのように感じた取材であった。

(日豊教区通信員 手嶋暁史)
『真宗 2009年(10月)』
「今月のお寺」犀川28日講
※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。

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