棗わんぱく学園の子どもたちが福井別院で紙芝居を上演。
棗わんぱく学園の子どもたちが福井別院で紙芝居を上演。
本当にしたいことがあったらそれをやれ

今回は、福井市郊外、日本海に近いなつめ地区にある佛護寺をお訪ねして、住職の長谷川祐乘さんと坊守の和子さんにお話をうかがった。そのなかでも、とりわけ2つの活動を紹介したい。

住職ご夫婦は、佛護寺を守りながらともに教員として勤務されていた。しかし、坊守の和子さんは50歳になったのを節目に、暁烏敏先生のお言葉である「本当にしたいことがあったらそれをやれ。それで、死んでも悔いなかろう」という思いを持って学校を退職、佛護寺に専念することを選ばれた。そして、まず取り組んだことの1つが、子ども会の立ち上げであった。

佛護寺の子ども会「棗わんぱく学園」は、それから18年続いている。なかでも力を入れているのが、子どもたちによる紙芝居作りだ。仏典や正信偈をテーマにした紙芝居を子どもたちが製作し、お客さんの前で上演する。発表の場はさまざまで、近隣のお寺や老人ホームのこともあり、一般のお宅のこともある。子どもたちがお年寄りに元気を送っていく姿、愛着のあるOB・OGが手伝いに来てくれる姿、子どもたちが互いに刺激を受けながら成長していく姿など、住職ご夫婦にとっては何よりの喜びであるそうだ。

仏法劇団「合掌座」30回以上の公演を重ねる。
仏法劇団「合掌座」30回以上の公演を重ねる。

もう1つ、佛護寺で注目を集めている活動がある。それが、お年寄りによる劇団「合掌座」だ。20人以上の団員が集い、和子さんのオリジナル脚本によって、笑いの絶えない物語のなかに仏法の教えを織り込んだ演劇を上演している。2007年1月に旗揚げされたこの劇団は、ご自坊の報恩講を皮切りに、吉崎別院の蓮如上人御忌、老人ホームや公民館などで、すでに30回以上の公演を行った。

住職ご夫婦によると、劇団を立ち上げたきっかけは、林暁宇先生がおっしゃった「聞法は毛穴から入る」という言葉だそうだ。大きな声を出し、全身を使って表現する「演劇」という方法は、教えを頭ではなく、体全体で受け止めようという試みでもあるという。発足当初は人間関係に苦心したこともあったが、今では練習も公演も、皆が楽しみながら取り組まれているそうである。

住職の祐乘さんと坊守の和子さん
住職の祐乘さんと坊守の和子さん

この他にも佛護寺の活動は多岐にわたり、取材の時間は楽しく、あっという間に過ぎていった。なかでも最も印象に残ったのは、さまざまな活動を通じて「私たちが「心の宝」をいただく」という和子さんの言葉である。住職ご夫妻の明るく前向きな姿勢にふれて、私自身もまた「心の宝」をいただいた…そんな思いになることができた取材であった。

(福井教区通信員 藤井 尚)
『真宗 2010年(8月)』
「今月のお寺」福井教区第5組佛護寺
※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。

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