栗原敏雄さん-事前学習会きたる2018年4月2日に厳修される全戦没者追弔法会に先立ち、2月27日にしんらん交流館大谷ホールを会場に、宗務役員を対象とした事前学習会を開催しました。

 

全戦没者追弔法会後に行わるシンポジウムに、パネリストとして登壇いただく毎日新聞記者の栗原俊雄さんを講師に、「戦争体験を戦後世代に引き継ぐために-「忘却」に抗する-」と題し、ご講演いただきました。

 

栗原さんは、シベリア抑留や硫黄島をはじめ、国内外における戦没者遺骨の未帰還問題などを熱心に取材されています。通常新聞の紙面では、戦争に関する問題は終戦記念日にあわせて夏に掲載されることが多いため、年中取材を行っている栗原さんは「常夏記者(とこなつきしゃ)」と呼ばれているそうです。

 

硫黄島で遺骨収集する栗原さん こうした地道な取材活動を続ける栗原さんのお話では、硫黄島の戦没者遺骨の未帰還問題について、遺族が遺骨の帰還を強く望まれるなか、遅々として解決への動きが進まない現状が、当事者の写真や資料のスライドとともに紹介されました。戦争被害者への補償問題の現実についても、戦闘は収束しても戦争による民間の人々への被害の補償は収束していないという現状を語っていただきました。

 

また、講演にあたり、2012年に亡くなられた廣瀬(ひろせ)(たかし)先生(大谷大学名誉教授・元学長)との出あいが、シベリア抑留を取材するきっかけになったというエピソードも取材時の様子とともに紹介され、先生とのご縁から始まった取材の日々をふりかえり、東本願寺という場で、シンポジウムに登壇できることの嬉しさについても語られました。

 

聴講者のアンケートからは、「知らない事実が多くあった。その中で、栗原さんの戦争は終わっていない。まだ、苦しんでいる人、被害者がたくさんいる。このことが、私の取材と執筆のエネルギーとなっていると話されたことが特に印象的だった」との感想が寄せられ、全戦没者追弔法会に向け、テーマや問題意識について宗務職員全体での共有に資するひと時となりました。

 

(全戦プロジェクト 記念講演・シンポジウム班 報告)