神奈川教化センターでは、昨年よりグリーフケアへの取り組みが行われています(2017年10月27日記事参照)。「別院でのグリーフケアの歩みは、まさしく『真宗グリーフケア』でなければならない」と横浜別院輪番も語るこの取り組み。今月もレポートが届きましたので、ご紹介します。

♣ 真宗大谷派本願寺横浜別院 神奈川教化センター企画広報部会主催
「 第2回グリーフケアの基礎を学ぶ研修会を終えて 」
レポート : 本願寺横浜別院 佐竹 大樹

横浜別院グリーフケア「基礎を学ぶ研修会」

第1回目の研修は「グリーフケアの基礎」という内容でした。グリーフという言葉は、ここ2、3年宗門内外でグリーフやグリーフケアという言葉を聞く機会が増えてまいりました。各教区などでもグリーフケアの研修会が実施されています。いよいよ関心が高まっているのかなということを感じております。

 

1回目の研修を終えて感じたことは、今までグリーフと聞くと主に死別による喪失体験がイメージされましたが、実は死別による喪失だけでなく、喪失という感情は身の回りに起こってくる身近な感情であることが分かりました。

 

我々僧侶は、大小のグリーフの中でも、身近な方の死別を経験された家族と関わることが多く、そういう現場を数多く経験しています。死別としてのグリーフを、葬儀や法事の現場の中で遺族の気持ちに応えられていたかというと、研修を通じて自分の関わり方を見直さなければいけないなと感じるところもありました。今回の学びを通して、多くの人の様々なグリーフに応えられるよう学んでいきたいと思っております。

 

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さて、第2回目の研修会のレポートを概略ではありますが、私がお聞きした内容や感じたこと、参加者の雰囲気などを述べさせていただきます。

 

第2回目の研修会は「セルフケア~自分自身を知る~」という内容でした。

 

1回目の研修同様、まず初めにチェックインがあり、前回は今の気持ちを色で表すワークを行いましたが、今回は漢字一文字で、今の気持ちを表すワークを行いました。色は同じ色でもその人の感じ方など状態で色のニュアンスが違い、面白いワークだなぁと感じましたが、漢字の方がより具体的にその人の状態が表されバリエーションが豊かで複雑で面白いワークだなぁと思いました。

 

 

次に、セルフケアについて浮かんでくるイメージを書き出すワークを行いました。セルフケアという言葉を聞いて、個々がどういうイメージを抱いているのかを知るワークは、自分の理解や言葉の意味を掘り下げるいいワークだと思いました。このワークでは、大きく分けると、逃避(お酒、趣味、好きなことをするなど)とリラックス(温泉、睡眠、呼吸、自分を知るなど)に二分されることが分かりました。
参加者は、参加者ごとにそれぞれにセルフケアに対するイメージがあり、皆楽しそうにワークをしていました。

 

尾角先生は、セルフケアは「自分自身を大切にすることです。」と説明していました。

 

また、セルフケアの種類には、回復・保つ型ともっと元気型の2種類があり、回復・保つ型は落ちているときにするセルフケアで、もっと元気型は楽しいことをしてもっと元気になるセルフケアであると説明がありました。

 

私自身も実生活の中で、気分がいい時、気分が悪い時があり、2つのセルフケアを使い分けていることがあるなぁと思いました。

横浜別院グリーフケア「ワーク」
⾃分にとってのセルフケアになっていることを、⾝体的、社会的、個⼈的、内⾯的の四つの傾向に分けて書き出すワークの様子

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続いて、なぜケアの現場で「セルフケア」が大切なのか、班ごとに話し合うワークを行いました。
うちの班では、人をケアするには、自分のケアができていないと上手く人と関わることができない。自分のことが分かっていないと、人のことも分からない。人の話を聞くことは、聞く方にも負担になる。調子がいい時は聞けるけど、調子が悪い時は相手の話を聞くことができない。自分が安定していないと、相手に不安が伝わってしまう。健康な気持ちでないと上手く関われない。など意見があった。

 

尾角先生は、グリーフケアの現場においても、人の話を聞くことは聞側にも負担になることがある。自身のセルフケアの方法を学ぶことは、その都度自分自身の状態を知ることで、自分をつぶさないため自分を守るために、何をすれば楽になるのかその方法を知っているだけでも自分を大切にできる。

 

色んな人の辛い話を聞くには経験が必要であり、聞く側は相手の話を聞いて辛い気持ちやしんどい気持ちになることがある。そういう気持ちにならないためにも、自分自身を保つためにセルフケアが大事であると話されていた。

 

また、自分を大事にしている姿を、相手の手本となることが望ましい。などと話されていた。

 

つづいて、人の辛い話を聞くと辛い気持ちになるのは、相手の気持ちに感情移入し過ぎて、共感疲労という現象が起こるからだと説明がありました。共感疲労は、事態が大きすぎて、無力感、罪悪感、無意味感などに襲われ、自分の中で大切なものが失われていくからだと説明がありました。

 

セルフケアを通して自分の未解決な問題などを知っておくことが大事であると話されていた。

 

 

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ここで1回目の休憩があり、休憩後、グリーフケアの現場で重要な3つのスキルについて話があった。

 

まず、1つ目は、「気づきの力」。気づきの力は、外から自分を見る。客観視する。聞いている自分を俯瞰し、自分の気持ちを捉え直すことであると説明がありました。

 

次に、2つ目は、「ままに」。「ままに」というのは、自分が今落ち込んでいるんだなぁと、そのままに見る。落ち込んでいる私は駄目だとジャッジしない。そのままの状態を見る。ジャッジしなければニュートラルになる。ありのままを感じることがセルフケアになる。と説明がありました。

 

最後の3つ目は、「境界線」。境界線が曖昧だと自分と相手の境界が入り乱れることがあり、自分を守るために境界線を持つことが必要だと話されていた。また、相手と私との適度な距離感を保つために、匂いや服装などで境界を作る方法を紹介された。時間という境界を持つことも、継続的に話を聞きあえるように設けることが必要だとも話されていた。

 

 

尾角先生は、「ままに」という概念で変われたと話されていた。今死にたい気持ちなんだなぁ、と外から自分の気持ちを俯瞰して、ジャッジせずに自分の自然な気持ちに気がつき、自分を大事にするきっかけになったと話されていた。

 

ここで午前中の研修が終わり、昼食の時間はリブオンの方と参加者とともにお弁当をいただいた。

 

 

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昼からの研修会は、まずロスラインの説明があり、自分の人生で言われたり、されたりして、嫌だったこと傷ついたことや嬉しかったこと、何を失ったのか何を感じたのかを線を引いて時系列にその出来事を画用紙に書き出していくワークを行った。

 

ワークをした感想では、失ったものを認めたくないので書けなかった。それぞれ感じたことや気付いたことがあった。失ったもので、向き合えるもの、向き合えないものがあった。など感想があった。

 

続いて、「分かち合い(自分を語る時間)」を体験した。「わかり合い」には、トーキングツール(ぬいぐるみ)を用い、ツールを持っている人が話をする。人と自分のグリーフを比べない。相手の話をままに聞く。話しても話さなくもいい。話したい人が話す。などルールの説明があり、ワークに入った。

 

分かち合いの場を体験してみて、話しても話さなくてもいい。話したい人が話す。比べない。ただ聞く。単純なルールだけれども、安心してその場に居られいいなぁと感じました。特に比べないというのは、安心して自分の話ができることがわかりました。

 

話しても話さなくてもイイというルールは、参加者主体で非常に良かったです。涙を流す参加者もあり、話をただ(ジャッジせずに)聞くという雰囲気もいいなぁと感じました。

横浜別院グリーフケア「分かち合い(自分を語る時間)」

 

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次に、「つどいば」について、尾角先生と水口先生の対談形式で進められた。

 

水口先生
「なぜ、つどいばを始めたのか」

 

尾角先生
「母を自殺で亡くし、あしなが育英会から奨学金をもらい大学に進学したが、奨学金をもらう条件が「わかち合いの場」への参加であり、「わかち合いの場」へ参加してみて、仲間たちの共感の力、場の力を感じたことが原体験となり、わかもののつどいばを作りたいと思った。」

水口先生
「なぜ若者を対象としているのか」

尾角先生
「全国に若者を対象にしたつどいばが少なく、若い人は、年が離れていて参加しずらい雰囲気があるなど意見があり、わかものを対象にしたつどいばがあればいいなぁと思ったのがきっかけです。」

水口先生
「活動の根本の願いはなんですか」

尾角先生
「私が必要としたからわかもののつどいばを作りたかった。辛い経験をしたので、同じ経験をした人と出会いたかった。こうした場を作ることが恩おくりと思いこの活動を始めました。」

 

など、対談形式で話されていた大まかな内容です。

 

 

 

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次に、場づくりにおいて必要な、グランドルール、大事にしていることなどについて説明があった。
グランドツールは、トーキングツールを用い、話している人、聞いている人の役割を明確にし、話したくない人は、ツールを取らないなど、意思表示になる。

 

大事にしていることは、アドバイスやコメント、比べる、などしたくなるが、「ままに」を尊重する。

 

語る時間については、話したくなければ、話したくない意思表示ができる。今考えていることを考えたり、表現したり、本人が何をしたいか、したくないのかを選べるようにしている。

 

開催の頻度は、必ず定期的に開催されることで、行けるところがあるという安心感になる。

 

当事者ミーティングは、当事者同士が、徹底的に聞くという関わり方をし、聞いたことを書き出し、視覚化し、関連付けていく作業をして、当事者同士が研究し、話し合って進めて行く場として紹介された。

 

尾角先生は、グリーフという考え方を知ることで、それだけで変われる人がいる。「つどいば」を自分のセルフケアのために利用する人たちがいる。「つどいば」と「当事者ミーティング」の両輪で、生活がしやすくなっていく人がいる。など話されていた。

 

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最後に、自分にとってのセルフケアになっていることを、身体的、社会的、個人的、内面的の四つの傾向に分けて、書き出すワークした。
うちの班では、全員僧侶であったが、個人的、内面的の傾向が多く、社会的な側面が少ない傾向がみられた。

 

第2回目の研修会を終えて感じたことは、普段頻繁に顔を合わしている人でも、あたり前のことですが知らない一面があり、色んな経験をされて今日があるんだなぁと感心いたしました。

 

言葉には出さないけれども、お1人お1人が様々な因縁に依って生きておられる。その因縁を私たちは人生と呼んでいます。私は仏教から「人生に無駄なご縁1つもない。すべてが有難いご縁である」ということを学んできました。1人1人にはそれぞれの人生があり、その1人1人の人生が有難い尊い人生であります。私たちはそのことが分からずに悩み苦しんでいます。

 

 

今日の研修会では「ジャッジしない」という考え方が紹介されましたが、私たちはやってきたご縁をジャッジして生きています。ジャッジする在り方がありのままに人生を喜ぶことを妨げている原因になっています。「ままに」「ジャッジしない」という考え方は、仏教に通じるものがあると感じます。ジャッジしないそのままの人生が有難い、尊い人生であります。そのことに目覚めて欲しい、気づいて欲しいという願いが本願であり、佛の教えです。

 

神奈川教化センターでは、3回目の研修会が終わり次第、グリーフケアを開催するため具体的に行動していきます。誰にも相談できずに悩みや苦しみを抱えて生きざるを得ない人たちのために、「人生に無駄な出来事(ご縁)は1つも無かった。これが私の人生でした。」と人生(ご縁)を丸ごと喜ぶ人が生み出されていくことを切に念じます。

 

以上、稚拙な文章ですが、第2回目の研修会の感想兼レポートとさせていただきます。

 

(つづく)

( 横浜別院だより「本願力」第72号より )

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