子どもを育てるとは 〜 家族、地域、お寺 あたたかな居場所 〜
鹿児島教区 大隅組 真宗寺

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※桜島フェリーにて、真宗寺を目指します

 

■お寺で新成人を祝う

「よく来たね~。よく来たね~。どうぞ、どうぞ~」

坊守である、中谷いつみさんの、やわらかであたたかい声が、新成人たちを、優しくそっと包みこみます。

平成31年1月4日。「垂水南地区新成人を祝う会」が、大隅組の真宗寺で開催されました。垂水市内にある真宗寺は、鹿児島市内からフェリーを利用し、約1時間。桜島や錦江湾を一望に見渡せる、のどかな場所に面しています。

「新成人を祝う会が、ここ真宗寺で開かれるようになったのは、5年前のことです」

と、住職の中谷明潤さんは語ってくださいました。ここ柊原(くぬぎばる)地域の子どもたちを、みんなで一緒に見守りたいと、「柊原地域青少年見守り隊」が発足。住職夫婦の息子さんたちをご縁とし、このお寺で、垂水市の成人式の前日に新成人を祝う会を行うことになりました。当初は、柊原地域の新成人のお祝いをしていましたが、児童数は年々減少。隣の地域の新成人も一緒にお祝いすることになり、今では垂水市内の中学校が統合され、一市一校に。そのご縁もあって、今年は垂水市内の他の地域の新成人もこの会に参加するそうです。
 
この祝う会に集うのは新成人だけではありません。柊原公民館長や柊原小学校の校長先生・教頭先生、新成人の旧担任の先生方、お寺の近くにあるさざなみ保育園の先生方、そして、真宗寺のご門徒さん方。新成人をお祝いしたいと、地域の方々が一斉になって、このお寺に集まりました。
 

■柊原地域と真宗寺

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※新成人の中谷朋生さんと(左)と見守り隊長の森山さん(右)

 
あたたかな雰囲気の中、新成人を祝う会は始まりました。
宴会が弾む中、見守り隊の隊長をされている森山稔さんにお話を伺いました。森山さんは、柊原公民館の館長でもあり真宗寺の推進員もされているそうです。

「私は知らん間に隊長になっていたのよ~(笑)。子どもたちを地域で見守っていこうと、この会は始まりました。夏休みに小学校の子どもたちを受け入れて寺子屋をしてるから、学校もこのお寺をすごく頼りにしてるんです。校長先生も教頭先生もたびたびこのお寺に来られています。お寺と学校が密に付き合っているんです。とても充実したお寺さんなんですよ」

と、森山さんは語ります。
 
“真宗寺は、充実したお寺”。その訳を尋ねてみました。

「真宗寺の年中行事は、とても盛り上がります。それは、坊守さんが門徒さんにいろんなお願いごとをしたり、的確な指示をしてるからです。お寺が栄えるか栄えないかは、坊守さんが門徒さんをひきつけるかどうかだとわたしは思います。加勢をもらえるかどうか。本堂にたくさん集まるかどうか。そういった努力が必要です。お寺は住職だけでは成り立っていきません。ここの坊守さんは、地域の門徒さんのためにいろいろと働いてくれる。これだけ動く坊守さんはなかなかいないでしょう。一生懸命坊守も動くけど、それに応える住職もいろいろなアイデアを出している。住職とそれを支える坊守。これが大事なんです。それと、住職がここの庫裡を、寝室以外は門徒会館として設計し建てたので、人が集まりやすいのです」

と、嬉しそうに語ってくれました。
 
前隣に座っていらした、柊原小学校の現教頭である川村昭平先生にも、お話を伺いました。

「わたしたち学校は、ここの寺に育ててもらっているようなものです。柊原小学校は、ここのお寺や柊原地域にもいつも支えてもらってます。本当にありがたいです。子どもたちに対する想いが篤い地域です」

と、仰っていました。

 

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※集まった新成人の皆さん

 
“子どもたちに対する想いが篤い地域”。
その想いに応えるかのように、新成人のあいさつが始まりました。一人ひとりが、はっきりとした夢を語り、親への感謝、地域への感謝を述べていました。また、ここに集まった新成人13人のうち3人が、縁あって真宗寺の近くにあるさざなみ保育園で4月から働くとあいさつしていました。地域に恩返しがしたいという気持ちの表れではないでしょうか。
 
その後もあいさつは続き、柊原小学校の現校長である仲村智博先生や新成人の旧担任の先生方、さざなみ保育園の先生方、新成人の先輩など、和やかな雰囲気の中でこの柊原地域の素晴らしさを思い思いに会場のみなさんに語っておられました。

 

 

■あたたかな居場所

柊原小学校出身で、4月からさざなみ保育園で働くこととなった新成人、岩元渚さんと瀬戸口千優さんに、この寺での思い出を伺いました。

「やっぱり、夏休みの寺子屋です。朝行って、勉強して、10時になったらおやつを食べて。坊守であるいつみさんの絵本の読み聞かせが毎日の楽しみでした。寺子屋以外にもお寺にはしょっちゅう遊びにきてたね」

と、2人は幼い頃を思い出しながら、嬉しそうに、そして楽しそうに語ってくれました。
 
最後は全員で集合写真を撮り、明日の垂水市成人式に向けて、名残惜しいといった雰囲気の中でのお開きとなりました。
 
坊守のいつみさんは、

「こうやって、みんな集まってくれるから、本当にありがたいです」

と、穏やかに、皆さんに感謝しながら語ってくれました。
 
柊原地域あっての真宗寺。真宗寺あっての柊原地域。今回の取材を通して、このことを密に肌で感じることができました。あたたかな居場所(家族、地域、お寺)が、子どもたち、そして、大人たちへの生きる希望や活力につながっていくのだと強く想いました。新成人の皆さまの幸多からんことを願い、この取材を終えたことです。

(鹿児島教区通信員 寺田 桃花)

 
 
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※ 新成人を祝う会に集まった方々での集合写真。

中谷住職(前列左端)と坊守のいつみさん(前列右端)