2019年度人権週間ギャラリー展

ハンセン病と真宗-小笠原登の事績を訪ねて

2019ギャラリー

開催期間 2019年12月10日(火)~2020年2月3日(月)

観覧時間 9時~16時

会  場 真宗本廟参拝接待所ギャラリー1階、地下1階

展示概要 ハンセン病強制隔離政策の歴史/ハンセン病問題と真宗大谷派/小笠原登の事績に学ぶ

 

公開シンポジウム

日  時  2020年1月22日(水)13時~16時

会  場  しんらん交流館大谷ホール

基調講演  藤野 豊  敬和学園大学教授

パネリスト    藤野 豊  敬和学園大学教授

      和泉 眞蔵     アイルランガ大学熱帯病研究所研究顧問

      黄 光男 (ファン グァンナム)  ハンセン病家族訴訟原告団副団長

      菱木 政晴 ハンセン病問題に関する懇談会真相究明部会委員

コーディネーター 山内 小夜子  解放運動推進本部本部委員

お問い合わせ   解放運動推進本部 TEL:075-371-9247

 

 

開催にあたって

 

今年の人権週間ギャラリー展は、「ハンセン病と真宗-小笠原登の事績を訪ねて」をテーマに開催します。今年は、ハンセン病強制隔離に抗した医師・小笠原登師没後50年の節目の年です。また本年6月28日には、ハンセン病回復者の家族らによる国に対する謝罪と損害賠償を求めた裁判(ハンセン病家族訴訟)において、原告の家族への勝訴判決が示されるなど、ハンセン病問題の歴史で画期的な年となりました。

 

1996年「らい予防法」廃止に際し、私たちは「ハンセン病に関わる真宗大谷派の謝罪声明」を表明しました。その中で「“教え”と権威によって、隔離政策を支える社会意識を助長」したこと、「国家と教団の連動した関わりが、偏見に基づく排除の論理によって“病そのものとは別の、もう一つの苦しみ”をもたらした」ことを、すべての「患者」と苦しみを抱え続けてこられた親族・家族に対して謝罪しました。

 

私たち宗門は、教えの言葉をもって病への恐怖と差別観念を社会に伝え、「宿業」という言葉で負えるべくもない責任を、その人に負わせるという苦しみを与えてきました。さらに「一人癩に感染すれば九族地獄に堕すのである」(『癩絶滅と大谷派光明会』)と、患者本人のみならず親族・家族にまでさらなる孤独を強いてきた歴史があります。差別や排除の論理に基づいた法や制度がさらなる偏見を強めることによって、私たちはハンセン病を患った人たちだけではなく、その家族をも差別し排除する社会を作ってきました。「もう一つの苦しみ」とはこのような差別的な社会が作り出している苦しみのことであります。そのなかで、医師であり、大谷派僧侶でもあった小笠原登師は強制隔離政策に抗し、ハンセン病を「平凡な病」として、患者自身とその家族の生活を大事にされ在宅治療を続けられました。

 

ハンセン病家族訴訟の判決では、国の隔離政策により大多数の国民らによる偏見・差別を受ける社会構造をつくり差別被害を発生させ、それにより人格形成や自己実現の機会が失われ、家族関係の形成が阻害されたと指摘しています。これは生涯にわたる個人の尊厳に関わる重大な「人生被害」であり、この偏見・差別を除去する義務を国が負っていると判断しました。その義務は国のみならず、差別社会を作り出した私たちの宗門も、そして私たち自身も負うべき義務ではないでしょうか。

 

今回のギャラリー展では、ハンセン病問題の歴史をたどり、国や宗門の罪責について知ることから始めたいと思います。さらに、差別と偏見に抗し「人間の尊厳」を勝ち取っていった回復者の方々の運動に学びたいと思います。歴史に学び、その事績を訪ねることを通して、一人ひとりが尊重される社会へと、その歩みがはじまることが願われています。

 2019年12月

真宗大谷派宗務総長 但馬 弘