新たなスタート地点に立って
第11回真宗大谷派ハンセン病問題全国交流集会実行委員長(高岡教区)青井 和成
 

■ゴールをめざして

第十一回「真宗大谷派ハンセン病問題全国交流集会」が、九月十三日より十四日まで富山県で開催され、三百五十名を超える方が参加くださいました。私は実行委員長という立場だったので、正直、大きな問題もなく終わった事実にホッとしています。終わったあと数日は、寝ても寝てもまだまだ眠れる日が続きました。
この交流集会を目指して、三年くらい前から歩んでまいりました。趣旨文や日程などを決めるために会議を開き、積んだり崩したりの繰り返しの中で、テーマや趣旨文、そして日程を作り上げていきました。また富山教区・高岡教区の各組、全十三組に出向いてハンセン病問題出前基礎講座を開いたりもしました。当然なことかもしれませんが、教務所で一回開く学習会よりも、各組に行って開催したことで、多くの方に関心をもっていただけました。それぞれの組長さんがたくさんの方々にお声掛けをいただいたおかげかとも思います。多くの方にハンセン病問題にふれていただいたような気がします。
 また、基礎講座で話させていただく中で、いろいろな声もたくさん聞かせてもらいました。私も何度か話をさせてもらったのですが、「あなたのハンセン病回復者の方との出会いが聞きたかった」という厳しい声もいただきました。そういう中で第十一回の交流集会のイメージが出来上がっていきました。他にも色々な取り組みを通して、交流集会の開催をゴールとして、一歩一歩、歩んでまいりました。
 しかし、交流集会を終えて少し日数が経った今、どうも交流集会の開催がゴールではなかったということに、少しずつ気づき始めています。本当に、やり終えたという気持ちはあるのですが、これから自分が歩んでいかなければいけないハンセン病問題の課題が浮かんでくるのです。ゴールと思っていたものが実はそうではなくて、スタートなんだと最近は思えています。
 いわば、今までの交流集会開催に向けての準備は、これから多くの方々とハンセン病問題を歩んで行くリスタートをするための準備だったのでしょう。ハンセン病問題全国交流集会を開催すれば問題は解決するのでしょうか? ハンセン病家族訴訟が勝訴したらこれで終わりなのでしょうか? やはりそうではないと思います。まだまだ課題がたくさんあります。

 

■「富山から考える」

 今回の交流集会では「富山から考えるハンセン病問題」というテーマとして開催しました。それは富山で起きたイタイイタイ病の問題を通してハンセン病問題を考えよう、ハンセン病問題の視線でイタイイタイ病のことを考えようということももちろんあるのですが、もう一つ、ハンセン病の療養所がない富山県においてハンセン病問題を考えよう、ということもありました。
 言うまでもなく、ハンセン病問題は療養所のあるところだけの問題ではありませんし、ハンセン病を患った方だけの問題では決してありません。「無らい県運動」の中、「ハンセン病は恐ろしい病気で伝染りやすい病気だ」ということを国に刷り込まれ、ハンセン病患者の方々を偏見・差別の眼差しで見るようになり、強制隔離する必要のない方々を強制隔離する手助けをしてきたり、ハンセン病回復者の方が療養所といわれるところで隔離されたままでいることを忘れている私たちの問題です。そのことがどれだけの方と共有できているのでしょうか?

青井実行委員長による開会挨拶
青井実行委員長による開会挨拶

■リスタート地点に立つ―「私」の課題として

 今回の交流集会でたくさんの教区の方に関わっていただき、またたくさんの方にも参加していただきました。ですから、ハンセン病問題を知っていただく契機にはなりました。しかし、どれだけ多くの人に「私」の課題として理解してもらえたのか。どれだけ多くの方にこれから私の課題として一緒に歩んでもらえるようになったのか。またこれからどのようにして富山でハンセン病問題を一緒に考えてくれる人を増やし、一緒に歩んでいけるのか。そういうことが課題として浮き彫りになってきています。
 そんなことを考えていると、この交流集会はやはりゴールではなくてスタート地点であり、リスタート地点ではないかと思います。そこは、自分を確かめる通過地点であり、これから何度も通っていかなければならない大事な通過点なのだと感じています。
 これからこの通過点を何度も多くの方々と通りながら、自分を確かめていきたいものです。

 

韓国・ソロクト、台湾楽生院から来日参加!

03キャプション無し 02キャプション無し

 山陽教区で開催された第十回交流集会に引き続き、韓国国立小鹿島病院から、姜善奉(カン・ソンボン)さん、通訳の姜済寂(カン・ジェスク)さん、台湾楽生療養院より許玉盞(きょ・ぎょくせん、シュイ・ユィツァン)さん、通訳・同行者として黄淥(こう・ろく、ホァン・ルゥ)さん、巫宛蓉(ふ・えんよう、ウゥ・ワンロン)さんが参加され、交流懇親会やリレートークで発言をされました。
  かつて日本の植民地だった朝鮮、台湾にも「らい予防法」が適用され、強制隔離政策が行われました。姜善奉(カン・ソンボン)さんはその困苦を詩にされて、『ソロクトの松籟(しょうらい)』(解放出版社)として刊行されています。ハンセン病問題という共通の課題を通して、草の根の民間交流がこれからも継続されていくことが願われます。

(解放運動推進本部)

真宗大谷派宗務所発行『真宗』誌2019年12月号より