真宗大谷派(東本願寺)では、宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃事業の5つの重点教化施策の一つとして、「真宗の仏事の回復」を進めています。これは朝夕のお勤めや報恩講をはじめ、通夜・葬儀・法事などのあらゆる仏事が、御本尊を中心とした仏法聴聞の場として回復していくための取り組みです。ここでは各教区の動きを紹介します。

 


 

《長浜教区における仏事の背景ならびに今後の展望》

 

長浜教区では、湖北の真宗仏事として「御越年(ごおつねん)法要」(※1)「乗如上人二十二日講」(※2)「下寄(しもより)十三日講」(※3)ほか、数多くのお講がおおよそ江戸時代から今日まで、ご門徒の手によって勤められています。そういった、親鸞聖人の念仏の教えに対する信仰心が篤い真宗門徒の歩みと歴史により、報恩講をはじめ、様々な仏事を縁として、念仏が相続され、湖北の宗教的風土が醸成されてきました。そのような人々の営みは、土徳と呼ばれています。

 

しかしながら、近年の仏教行事を垣間見ると、仏事の縮小や教えの希薄化、また、過疎化が進む中で参拝者の減少、寺離れ、墓じまいなど、土徳があると言われる長浜教区の地域でも、仏事の相続等が危ぶまれてきていることは否めません。このままでは、仏法の法灯が消えてしまう。そう現況を省みることを通して「お寺は誰のためにあるのか」「何のためにお寺はあるのか」「私たちは真宗門徒となりえているのか」という課題に鑑み、教区教化委員会にて、如来教化なる仏法弘通の原点をたずねるべく、生活にある仏事の意味や作法、願いやいわれについて、改めて問い直すと同時に、これからの仏事のあり方をたずねていく機会となるよう、「仏事の回復」をテーマとして、2019年度から「これからの仏事を考える学習会」(旧名称:親鸞サークルSOS)を開催することとなりました。

 

 

※1 12月26日~1月8日までの計10日間、乗如上人の御寿像2幅を並べて法座が勤まる湖北地方にとって非常に重要な法座となっている。

 

※2 乗如上人が在職中の天明8年に京都に大火(蛤御門の変)があり、本山の両堂ならびに諸殿が消失。本願寺では再建に務められ、湖北三郡(坂田郡、浅井群、伊香郡)の多くの門徒衆が長い歳月をかけ、国元を離れ再建の手伝いに京都へ手伝いに上京。火災以来11年目に、阿弥陀堂と御影堂が完成。この落慶を祝って湖北三群門徒衆に本山から乗如上人の御寿像二幅と御書を下付され、大切に相続されている。なお、先にあげた「御越年法要」(※1)を皮切り法座が始まり「鏡割り」の行事を経て1幅ずつ「北廻り」「南廻り」と湖北の村々を回り、約半年かけて勤められる。また、乗如上人の御命日の二十二日に因み「二十二日講」または絵像が各在所をまわるので「まわり仏さん」とも呼ばれる。

 

※3 下寄講(しもよりこう)とも呼ばれる。証如上人から十字名号(親鸞聖人御真筆)を下付されたことを縁とし、恩を偲び勤められる講として、長浜教区内12ヶ寺によって勤められている。

 

 

 

《学習会のねらいについて》

 

これまでの学習会(親鸞サークルSOS)では、講義・座談を基調としたオーソドックスな学習会を開催してきましたが、長年続けて行く中で「座談での発言の減少」「参加者の減少」等の課題が顕著に表れ、学習会の持ち方を抜本的に点検することとなりました。そこで2019年度からは、講師を立てない「自主輪読会」の形式(全4回)に合わせて、最終回に研修会を開く形式を初めて採用することで、課題を改善する試みをしました。

 

内容については、生活にある仏事に着目し、テーマを「葬儀式に学ぶ」とすることで、座談の中であがる素朴な疑問や様々な声を重要な要素として位置づけました。また、最後の研修会は単に先生に講義を聞くだけにとどまらず、先に上げられた課題を事前に先生に伝達し、それらの課題に応えていただける形となるような内容とすることで、自主輪読会の振り返りの場となると同時に、自らの学びが深まっていくことをねらいとしております。

 

親鸞サークルSOSチラシ

※2019年度は、新型コロナウイルス感染防止対策のため「自主輪読会」第4回目(2020/3/10)ならびに、「講義」(2020/5/12)は中止となりました。

 

 

《開催された自主輪読会》

 

 

【第1回目】

日  時:2019/9/11(水)19:00~21:00

会  場:大谷会館講堂(長浜教務所)

参 加 者:20名

テキスト:『浄土真宗の葬儀』(東本願寺出版)

輪読箇所:「門徒・僧侶からの問いかけ」P2~9

 

【第2回目】

日  時:2019/11/19(水)19:00~21:00

会  場:大谷会館講堂(長浜教務所)

参 加 者:12名

テキスト:『浄土真宗の葬儀』(東本願寺出版)

輪読箇所:「現代の死生観について-住職からの問題提起」

「葬儀社との関わりの中で-僧侶からの問題」P9~19

 

【第3回目】

日  時:2020/1/21(火)19:00~21:00

会  場:大谷会館講堂(長浜教務所)

参 加 者:12名

テキスト:『浄土真宗の葬儀』(東本願寺出版)

輪読箇所:「葬儀のかたち」P21~37

 

 

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第1回目(9/11)の自主輪読会の様子。ご門徒、住職、坊守、若手僧侶の参加がありました。

 

 

 

 

 《自主輪読会の座談で出た主な意見のご紹介》

 

 

  • 家族葬や直葬など、経費を軽減する傾向等に伴い、大切な葬儀が希薄になっているように感じる。

 

  • 昔大事にしていたことが、今すごく崩れているように思う。

 

  • 時代とともに、葬儀式を以前の形でできなくなってきている一つの要因として「人に迷惑をかけたくない」ということがあるのではないか。

 

  • 仏事を考えていくうえで、その「いわれ」をたずねていくことが大切ではないか。

 

  • 湖北地方にはお亡くなりになられたことを「お浄土にお参りされた」「参らせてもろた」という言葉が残っているが、実際は捉え方などが変わってしまっている。

 

  •  いくら大切だと思っていても、伝えていかねば意味がなくなる。そうでなければ益々仏事が離れていってしまう。

 

  • 次の世代に仏事の大切さを伝えていかないといけない。それが、私たちの責任ではないか。

 

 

 

《全体をとおして》

 

講師がいないことで、上記以外にも素朴な質問や意見が活発に交わされ、気兼ねなく、何でも話しをしてもよい雰囲気になったことは有効な点でありました。また、ご門徒の参加があったことで、仏事に対する率直な声を聞くことができたことも良い機会になり、多岐に亘り、参加者からたくさんの声があがったことは有難いことでありました。それだけ、葬儀に関する関心が高いことがわかると同時に、仏事を学び直す機会として「葬儀式」を切り口として開催できたことは、非常に意義あることでした。  

新型コロナウイルスが猛威を振い、結果的に自主輪読会は3回の開催で終わってしまい、輪読会で挙げられた問いや問題点を講師に聞く機会を失っていましたが、今後もじっくりとテキスト『浄土真宗の葬儀』を基軸に据え、継続的に学ぶ場を開いていきます。

 

(長浜教務所)