「狭山事件」に関して無実を訴えてこられた石川一雄さんが、3月11日に逝去したことを受けて、宗務総長コメントを発表しましたのでお知らせします。
石川一雄さんのご逝去にともなう「狭山事件」に関する宗務総長コメント
このたび、長年「狭山事件」における無実を訴えてこられた石川一雄さんのご逝去を悼み、謹んで哀悼の意を表します。
1963年5月1日、埼玉県狭山市で女子高生が誘拐され殺害される事件が発生し、石川一雄さんはその容疑者として逮捕されました。しかし、捜査や取り調べの内容が明らかになると、部落差別に対する社会意識を利用していたことが判明しました。
真宗大谷派は、石川さんが訴えてこられた、冤罪を生み出すほどの部落差別の悲惨さを聞きとり、再審請求の署名活動や現地での学習会をはじめとした取り組みを継続してまいりましたが、ご存命中に無実の訴えが認められなかったことは誠に残念でなりません。
「狭山事件」の解決に向けた取り組みは、決して石川さん個人の問題ではなく、部落差別解消にむけた取り組みそのものでもあります。石川さんは1994年12月に仮釈放となりましたが、その手には「見えない手錠」がかけられています。石川さんに手錠をかけたものは、私たちのもつ被差別部落への差別意識に他なりません。
私たちは「同朋社会の顕現」を存立の本義に掲げる教団であります。石川一雄さんの訴えに部落差別解消への願いを聞きとり、再審法改正にむけた議論をはじめとした不断の取り組みを通して、あらゆる差別からの人間解放の道をたずねてまいります。
2025年3月19日
真宗大谷派宗務総長 木 越 渉