観光地として有名な飛騨高山の中心部より東山の辺り。寺院群の一画に飛騨の中心寺院である光曜山照蓮寺があります。市民には「ごぼうさま」と慕われる高山別院の正式名称です。この寺院は約750年前、現在は世界遺産として有名な白川郷に、嘉念坊善俊上人により真宗の道場として開かれました。高山に移基して430余年、飛騨に真宗の教えを伝え広めています。その間、8度の火災を経験し、焼失の度に「おらがごぼさまのために」と飛騨門徒の浄財と労力により再建がなされてきました。近年では1955(昭和30)年に本堂が放火により全焼。二度と悲劇を繰り返さないよう、1963(昭和38)年に耐火建築で本堂が再建され、現在に至っています。毎月3日には嘉念坊善俊上人御命日、28日には親鸞聖人御命日の法要があり、多くの方がお参りされます。
そして最も重要とされているのが毎年11月1日から3日の「ごぼう報恩講」ですが、昨年の準備で例年にないことが行われました。いつもは別院のご門徒と飛騨南部の益田組のご門徒で数百もの大小の仏器をお磨きしていましたが、今回は10月23日に高山地区8ヵ組の組門徒会員が集まり、組門徒会研修としてお磨きをしました。
当日は総勢125名が6班(15名~26名)に分かれて円を作り、仏具に磨き粉を全体に塗る係→タオルで仏具を磨く係→新聞紙で仏具を磨き仕上げる係…といった具合に仏具をリレーしていく【ぶつぐリレー】方式で作業が行われました。
作業に入り、形も大きさも様々な200弱の仏具が、順番に円を回っていきます。門徒の方々も楽しそうにおしゃべりをしながら着々と磨いていきます。時には大きな華瓶・鶴亀・金香炉の細工に苦労しながら…。それでも、気が付くと想定していた時間より早く仕上がっていました。
磨き上げられた仏具が内陣に飾り付けられ、疲労と共に達成感が溢れる空間となり、最後に三島多聞輪番からは「飛騨一円の組門徒会員が協力している姿を見て、飛騨御坊(高山別院)が飛騨の中心であることを再確認できた」という言葉がありました。
この企画をした育成部会の三木朋哉氏は「身体を動かし清掃活動することで、親鸞聖人の教えに触れ、本山への思いを新たにして、その思いに触れたご門徒が周りのご門徒にその思いをつなげていく。そんな効果を期待したい」という思いを語られました。
参加された朝日高根組門徒会員の足立律子さんは「お盆と正月にお内仏のお磨きはしているが、この機会に別院の仏具を磨かせてもらってありがたかった。大きくて大変だったけど、自分の手をかけて磨いたものが最後に美しい別院のお内陣に荘厳され嬉しかった。また別院の報恩講さまに友達と参りたいと思います」と話されました。
(岐阜高山教区通信員・白尾 匡)
『真宗』2025年4月号「今月のお寺」より
ご紹介したお寺:高山別院照蓮寺(輪番 三島 多聞)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しております。