長崎駅から車で30分ほど。駅から美しい海が見える風景で有名な大草駅の少し手前になります、長崎県諫早市多良見町舟津に圓滿寺があります。

圓滿寺の外観

圓滿寺では現在、ダウン症アーティストと呼ばれている京都市在住のアーティストつちやあきおさんの絵本原画展が開催されています。この春に帰山された若院の長野摂受氏が所属しているPENKI FACTORYという大谷大学卒業生の倉光延行氏がプロデュースしたアートボランティアグループの活動の一環です。また、この活動はお寺が主催となって地域密着の文化活動を推進するTERART(テラート)という京都精華大学名誉教授の高島寛氏が立ち上げたプロジェクトと協力する形での開催とのこと。

本堂に上がると、つちや氏の原画が3点展示されており、原画の大きさと独特な色彩に驚かされます。また、お寺でアートを眺めるのも新鮮な気持ちでした。資本主義的な芸術ではなく、現代社会の価値基準、判断基準にとらわれないアートを発表していく場にはお寺がふさわしいのではないかと摂受氏は語られていました。今回の展示により、お参りに来られた方の中には、孫へと絵本を求める方もあれば、読み聞かせをしている方が求めていかれたりもしたとのことです。そういう、お寺に置いたからこそ起きた出遭いを大切にしていきたいとも考えているようです。


TERARTの解説の文を頂いたのでそちらから感銘を受けた文面を抜粋すると、

お寺や地域の活性化を目指すならば、昭和の高度経済成長的な社会の発展系ではなく、本 当に私たちが求めている充実感というものを社会の中心として考えなければなりません。 (そこには当然、私たちが是としている社会慣習や社会構造を創造的に考え直すことも含 まれるでしょう) そして、お寺はまさしく「であい」の場です。曽我先生が「回向表現」とおっしゃったよ うに、阿弥陀仏から表現していただいた「南無阿弥陀仏」の名号のもとに私たちは未知のもの、既知のものと出遇っていけるのではないでしょうか。

と述べられており、寺院活性化に対する考えの一つとしてすばらしいことだと思います。

長野摂受氏による語らいの様子?

現代の価値基準とは違う視点を大切にした歩みができるのがお寺という空間ではないでしょうか。人と人との繋がりによる新たな展開、化学反応があると強く信じる語らいの中で「個別に、一人ひとりがコアになっていくことが次の100年に、子どもたちのためになる」と摂受氏が語られていたのが印象深かったです。これからのお寺を担っていく世代が、このように明確な展望を持ちながら御自坊に帰山されたことを心強く感じるとともに、我々も励まねばならぬと背中を押されているようでした。

(九州教区通信員 奥村 誓至)


【次回のつちやあきおさんの絵本原画展のご案内】

会場:三条NTTコラボレーションプラザ(京都府京都市中京区場之町604)
日時:2025年6月2日(月)-6月13(金) 10:00-17:00(土・日休廊)
お問い合わせ先:075-746-5244

【つちやあきおさんのホームページはこちら】https://tsutiyaakio.com