一年を通して、子どもたちの声の絶えることのない乗蓮寺。
朝に夕に、掲示板では足を止め、お堂では宿題を教え合い、終われば皆で遊ぶ。保護者の方たちは談笑しながらそれを見守っています。
世代を超えて集まれる聞法の場となるまでに、乗蓮寺ではどのような活動をされてきたのでしょうか。

皆が集まれるお寺になるまで
大垣市の中心にある乗蓮寺は、終戦直前の大垣空襲を奇跡的に免れ木造のまま残る歴史の古いお寺です。23代目ご住職の藤さんが夫婦一緒に入寺されたのがおよそ15年前のこと。入寺してすぐ、子ども会の夏のお経の稽古で、子どもたちがお寺に来るきっかけを作られました。多くの地域でそうであるように、ラジオ体操のあとにお勤めの稽古をしています。

その後、子どもたちの「もっとお寺で遊びたい」の声をきっかけに「カブちゃん寺子屋」という宿題を持ち寄る会を開かれました。お昼頃に再びお寺に集まり、皆で宿題をやる。終わった子から好きに遊んでよい。毎年、およそ12~3人の子どもたちが期間中毎日集まるそうです。
今では子ども会の一期生の子が先生となり、寺子屋で子どもたちの世話をし、勉強を見てくれたりしています。
乗蓮寺の一年
夏に限らず、乗蓮寺では一年を通して子どもも大人も参加できるような行事を多く開いています。
春には花まつり、秋には焼き芋まつり、冬には子ども報恩講に餅つき大会、年末には除夜の鐘。夏にはもちろん、子ども会が開かれています。門徒に限らず子どもやその保護者も参加していただけるため、どの行事も50人前後が集まる大変にぎやかな行事になるそうです。

一例として、夏の子ども会では庭にプールを用意し遊んでもらえるようにしています。そしてお盆明けにはお経のおさらいをし、その後バーベキューや流しそうめん、花火などで保護者ともども楽しい時間を過ごされます。
これらの行事では、子ども会のOBである「若者同朋会」の中学生から社会人までのメンバーが、行事の手伝いをしてくれます。行事では準備や片付けはもちろん、調理や進行の手伝いも若者同朋会の皆の手に任されています。また、出店などもメンバーの発案で行われます。住職は予算を決めるだけで、店の種類やどのような準備が必要か、全てメンバー主導で、タコ焼きやフルーツポンチやスイーツなど、その時々の子どもに喜んでもらえるものをそれぞれの工夫で作られています。年の終わりには、除夜の鐘を突きに来てくれる人のために豚汁を皆で用意します。鐘を突いた後も皆で本堂に残って語り合い、そのまま修正会を勤めます。




お寺に来てもらえるように
世代を超えて多くの人が集まる乗蓮寺ですが、普段の生活の中、どのような思いで、どのようなやり方で皆にお寺に来てもらえるよう働きかけておられるでしょうか。
道路に面した掲示板では、どなたにも見てもらえる掲示伝道に加え、子ども掲示板、みんなの言葉のコーナーがあり、大人も子どもも足を止めてくれています。

みんなの言葉コーナーでは言いたいこと、伝えたいこと、好きなこと、なんでも載せてよく、お寺の掲示が1ヶ月ごとなのに対し月に2回変えることもあるほど多くの言葉が寄せられています。10年ほど続いた今、友達の言葉が載っている、知っている言葉がある、子どもが書いた言葉があった、などで、わざわざ遠くから見に来てくれる人たちもいるほどです。

また、普段からご法事に行く際には輪袈裟にオリジナルの缶バッジを付けて行かれ、子どもがいるお家では1つずつ配っておられます。「子どもにとって法事の思い出として、一つでも嬉しいことが増えるといいな」と始められ、今では年に5~60個配るほどになり、お寺に親しむきっかけの1つとして続けておられます。
前項で述べた若者同朋会ですが、最初はどの世代でもお寺に集まれるきっかけになれば、と若者教化プロジェクトをきっかけに始められたものであり、座談会などで世代を超えて語り合っておられます。
なかなか話し出すきっかけの掴めない子どもたちのために、年代ごとに話題カードを用意するなどの工夫で、幅広い年代の子どもたちが集まるきっかけを作っておられます。
また、どの行事でも、可能な限り保護者のみなさんたちも手伝っていただくようにしているそうです。子どもたちが勤める行事を見守るだけでもいい。若者同朋会は、同時に保護者の同朋会でもあります。
世代を超えて
このように子どもから大人まで、皆の集まれる乗蓮寺となるよう活動を続けてこられた藤住職、思い出深いことは何かとお尋ねしたところ、次のようなお話を伺うことができました。
自分の子どもの卒業式に衣で出席したところ、子ども会のメンバーの子どもたちに、いっしょに写真を撮って欲しいと頼まれたこと。
家の鍵を無くした子どもが、お寺を頼ってきてくれたこと。
子ども会卒業一期生の子が、就職して学校の先生になる時、報告と法話を聞かせて欲しいと訪ねてきてくれたこと。
いずれも、藤住職と坊守様の積み重ねてこられた信頼と実績により、お寺が頼りになる、親しみのある場所として子どもたちに認められていることに他なりません。
「いろいろな世代のひとが、お寺で関わり合う。関わり合うということは、仲良くもなるし、喧嘩もする。
それでもお寺では、みんな一緒。仏様の前ではみんな同じ仏の子ども。このことを、親さんや、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に感じてもらいたい」
多くの活動を立ち上げ、続けてこられた願いとは、との質問に、藤住職はこう答えられました。
『どの世代にも開かれたお寺でありたい』という藤住職の願いは、子どもも親もその間の人たちも、皆の集まれる乗蓮寺の姿に現れていると言えるでしょう。
(大垣教区通信員 内田篤宏)