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被災地から

東京教区茨城2組若手の会講演会取材

青少幼年センターとして、継続的な災害支援活動の中で、子どもたちが抱えた不安に対する精神面のケアについて学び、理解を深めていく必要があります。 そして今後の具体的な対応策が求められてくることでもあるため、専門家等からアドバイスを受け、諸団体とも連携を図りながら取り組んでまいりたいと考えています。 今回は、その一環として取材を行いました。

 

2011年6月25日、茨城2組浄安寺(星野秀凉住職)において佐賀枝夏文氏(大谷大学教授)を講師に 『震災後のこころのケア講演会‐子どもたちが抱えている“不安”を見つめる‐』が開催され、子どもをもつ親世代を中心に50名程の参加がありました。

茨城2組若手の会では、定期的にボランティア活動として、損壊した屋根を覆うためのブルーシートや土のう袋等を寺院に届けておられます。 しかし、物資が広く行き渡らないことや、使用していたシートが劣化し新たなものが求められるので、不足している現状だそうです。

講演会に向けた準備の中で、このようなボランティア活動も必要だろうけれども、地震の影響からの不安、こころのケアについて学習をする必要があると確認されました。

 

開会にあたり、主催者を代表して星野暁氏(浄安寺候補衆徒)より「震災を受けて子どもの不安と同時に、親にもこれからどのように生活していけばよいのか、 経済のこと、原発問題のことへの不安が募っている」との説明があり、建物等の物的被害のように視覚的に捉え難い、 傷口の見えない心的被害が子どもから大人にもあるようでした。

また「講演会のタイトルは、震災後のこころのケアとしていますが、このような不安や問題を抱えているということからすれば震災中です」との言葉からは、 現地では復興が進むにつれ、震災前の日常生活に戻るのではなく、ある意味で二次災害と言えるような問題に直面し、現在も苦悩されておられる姿がありました。 それに、平穏な中での開催ではなく、会所の墓地は墓石が倒壊したままで立ち入り禁止となっていました。

 

佐賀枝氏からは、テーマ『うしないし、こころ模様‐悲しみやつらい体験から見えてくるもの‐』と題し、講師自身の幼少体験の話として「ボクには、 原風景として二つの出来事あり、それを消そうと思い消しました。これは消してはいけないものだったために、心理的問題を抱えてしまいました。 逃げだしたら楽になると思い逃げたのです。本来であれば、逃げてはならないものから逃げただけだったのです」と語られました。このように誰にでも原体験があり、 それをどのように受け止めるかがあるのかもしれません。

続けて「人には性分と性格があります。性分は本体で変わりようのないもの、性格は関係によって変わります。ボクが悩みのカタマリのような性格になったのは、 逃げだし、受け止めることもなく、引きずってしまったからです」と原体験がその後の人生に影響するのではないかということを示唆されました。

では逃げることなく受け止め、悩みと対峙するため、その根底にあるこころ模様ということについて「こころに形があるとすると風船で、材質はゴムのようなものです。 容量も限られると思います。他人から批判されると、材質はガラスのように冷たくもなり、ちょっとしたことでフリーズします。 また、こころには体力のようなものもあり、体力がある時には、石が飛んできても跳ね返すけれども、体力がない時には、痛烈な言葉が入ってきてフニャフニャになります。 そして、こころの風船のフタになる部分には安全弁のようなものがあって、今回の地震で安全弁が閉じてしまったままとなりました。 ですから中にイライラ、不安、おっくうが溜まって抜けなくなっています」と視覚で捉えることのできない、こころ模様、つまり悩みや不安の様子を、 風船のような図を用いて説明されました。

子どもが不安の状態にある時に、爪噛み、夜泣き、おねしょ、赤ちゃん返り等の症状が引き起こされ親は戸惑います。その際の接し方として 「安全弁はどのようにすれば開くのでしょうか。例えば、大変だったねとか言ってもらえればよいと思います。それを、見捨てるように出て行きなさいと言われると 子どもは辛いと思います。包んで温め、許してもらうのがよいと思います。臨床の現場では、爪噛みを止めなさいと言うよりも、辛いのねと言うほうがよいと思います。 後ろにまわって背中をトントンとしてもらう。辛いけれども一緒に行こうというように伴走してもらうほうがよいと思います」と実践例を挙げて、 子どもを見守る親や大人の姿勢について紹介されました。

最後に原風景にある不安をどのように受け止めていくのかについて「フラッシュバックするもの、原風景から逃げてしまうのか。ここで逃げないのであれば、 課題をもらったと言えるようなことがあるように思うのです。大変なことが起きて大変というのは当たり前です。 しかし、大変なことが起きて見えてくるものがあるように思います。人生の中で大変なことが起きて、破綻して、そこからリライト(書き直し)して、 そのことを通して見えてくる。どんなに辛く悲しくても、その日は、その人にとって輝いて素晴らしいのです。悲しくて駄目だと思うのではなくて、 輝いていると思うようにしませんか。駄目なことは駄目ではなく、厄介なことが出てきても、そのことを通して見つける。そこから、自分を発見できるのです。 人は揺さ振られないと見えてきません。人生にしつらえてある、本当に大事なものは揺さ振られないと見えないのだろうと思います」と講演を締めくくられました。 不安を抱えていた参加者の表情は開会前よりも穏やかになり、丁寧に子どもたちと向かい合っていきたいとの声が聞かれました。

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