ほとけの子 花まつり

いまから2500年ほど前に、インドの北の方でお釈迦さまはお生まれになりました。それは花の咲く4月8日の日でした。そのお釈迦さまのご誕生をお祝いするのが「花まつり」です。

お釈迦さまは、お生まれになるとすぐに、天と地を指さして、「天上天下唯我独尊」(天上天下に、ただ我ひとりにして尊し)と声をあげられました。これは、「世界中で一番偉いのは俺だ」といばっているのではありません。他の人と決して代わることのできない、かけがえのないいのちが与えられているということに目覚めたことばなのです。

だれだって、自分自身を大切にしたいと思っています。自分の一生が後悔のないものであることを願っています。しかし、どのようにすればその願いが実現するかは、あまりはっきりしていません。

お金持ちになること。有名になって回りから注目されること。競争に勝って人の上に立つこと。人の役に立って感謝されること。そのようなことが後悔のない人生に結びつくと思われていることが多いのではないでしょうか。ところが実際は、思いどおりにならないといって苦しんだり、他の人と比べて自分を情けなく思ったり、しまいにはもう生きていく望みがないといってやけを起こしたりしているのです。

そんな私たちにお釈迦さまは、「あなたは、だれとも比べることのできない尊い存在なのです」と呼びかけてくださっています。この呼びかけが聞こえないかぎり、勝ったか負けたか、得をしたか損をしたか、優れているか劣っているかというものさしだけで自分を計り、一生を過ごしてしまうことになります。

お釈迦さまのご誕生によって、何が本当にたいせつなことであるかが、はじめて明らかになったのです。そのお釈迦さまの教えを聞くのが「花まつり」の日です。

「ほとけの子」 春のしおり 花まつり

『独尊 -かけがえのないこと-』 (小松教区  一楽 真)