真宗大谷派(東本願寺)では、宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃事業の5つの重点教化施策の一つとして、「真宗の仏事の回復」を進めています。これは朝夕のお勤めや報恩講をはじめ、通夜・葬儀・法事などのあらゆる仏事が、御本尊を中心とした仏法聴聞の場として回復していくための取り組みです。ここでは各教区の動きを紹介します。
《青年学習会とは》
東京教区教化委員会青少幼年部門では、40歳代までの僧侶を対象に、「青年学習会」を開催しています。この「青年学習会」を事業化する以前は、東京都文京区にある求道会館をお借りして「輪読会」を開催していました。その中で、当部門が主催している他の事業とつながりを持たせることや、委員自身が取り組みたいタイムリーな課題について即座に動き、さまざまな角度から課題を考えられるようにしたいとの思いから、2015年度より「青年学習会」として事業化し、課題に向き合っています。
これまでの活動内容としては、東京都中央卸売市場食肉市場(芝浦と場)の見学をはじめ、LGBT問題について当事者の声を聞かせていただくなど、さまざまな場所に身を運び、当事者の方との会話を通して、諸課題を自分の肌で感じ、向き合っていくことを大切にしてきました。
《儀式をとおした念仏相続を課題に》
2019年度は、委員との話し合いの中で、葬儀の簡略化や年忌法要の減少、墓じまいの増加など、寺離れによる寺院存続の危機が叫ばれている昨今、若手僧侶が、日常の法務・作務を執行する中での課題を通して、儀式を通した念仏相続についてさまざまな角度から語り合えるような学習会にしたいとの思いから、「誰のための儀式? 何のための儀式?」を年間のキーワードに据え、内部学習を含め全5回の学習会を開催しました。 各回の詳細については下記のとおりです(各回のテーマをクリックすると案内チラシが表示されます)。
ー第1回ー
テーマ:「日常の法務・ 作務を考える」
会 場:東京2組專念寺(東京都台東区)
内 容:「儀式を考える-真宗の荘厳とこれからの儀式のあり方-」(『真宗』2019年6月号)の輪読・座談
<参加者の感想>
- 「教化のやり方」ではなく、「教化」とは何かを改めて考えなければならないと感じた。
- 輪読の文章にあった「大切なことはめんどくさい」という言葉が印象的だった。
- 目の前の一つひとつの事を大切にしないといけないと改めて考えさせられた。
ー第2回ー
テーマ:「カトリック教会における儀式」
会 場:カトリック関口教会(東京都文京区)
内 容:カトリック関口教会(東京カテドラル聖マリア大聖堂)の施設見学・キリスト教の儀式について神父からの講義・座談
<参加者の感想>
- 他宗教のため、真宗とは異なっている部分が多いが、死者のためのミサではなく、生者のためのミサであるといったことなど、真宗の教えと重なる部分もあると感じた。
- 講義では「神父っぽく振舞っている人もいる」という話があったが、自分自身のことを言われているようにも思えた。また、キリスト教の儀式も時代によって変わってきているとのことだったが、真宗の儀式についても考えていかなければならないと感じた。
ー第3回ー
テーマ:「“開教” の視点から学ぶ」
会 場:東京2組報恩寺(東京都台東区)
内 容:元首都圏大谷派開教者会の吉岡康裕氏からの講義・座談
<参加者の感想>
- 講義の中で「選ばれる自分」になるというワードが印象に残った。他者との関係の中において、選ばれる自分になることが大切だということに重きをおき、お寺にいる当たり前の自分ではなく、社会的に選ばれる存在になるという事を意識していかなければならないと思った。また、講師から「門徒と出会いなおしていきなさい」という言葉をかけられたことが心に残っている。
- 既存の寺院とは違い、一から開教した吉岡氏の門徒との出会い等、さまざまな視点からお話をいただけた。自分の事でいえば、長い間法事がないご門徒の顔と名前が一致しないこともあり、疎遠を感じることもあるが、だからこそ「仏教を聞く」という一点で共に出あっていくという事を考えれば、もう少し積極的、策略的な施策を展開していくことは大事なことのように思う。
上記の3回に加え、2019年度の学習会は当初、第4回の開催も予定していましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大によりやむなく中止となりました。そこで、委員のみの内部学習会として、web上で輪読会(『浄土真宗の葬儀』(竹中智秀 著)の輪読)を行いました。
さらに、儀式の執行方法も含めて、どんな状況下でも仏法聴聞の機会を開いていくための方途を考え、実行していくことが、念仏を相続していくために僧侶に求められているのではないかと感じ、急遽第5回として、web 会議サービス「Zoom」を利用した輪読会を開催することとなりました。
ー第5回ー
テーマ:「今、私たちに何が求められているのか。」
会 場:web 会議サービス「Zoom」
内 容:東京教区教化委員会報『NW9』(5 月号・6 月号 特集記事)「異常事態が続く生活の中で、我々、真宗門徒の立脚地はどこにあるのか」の輪読・座談
<参加者の感想>
- 新型コロナウイルスの影響で、実際に顔を合わせることができない中、コロナ禍における寺院での悩みや新たな取り組みについて語り合い、今後の教化活動への新たな可能性を感じてもらえたように思えた。
- 画面上での開催のため、実際に対面しているときと違って、緊張感も少なく、話しやすかった。ただ、実際に顔を合わせて会っていないため、本当はどう思っているのか空気感が分からないと感じた。
- web 会議サービスを使用する場合は、移動する必要がないので、会場から遠方のため普段の学習会には参加できない方や、留守番等でお寺を離れられない方など、教区内各所から気軽に参加してもらえるきっかけとなった。
《2019年度の「青年学習会」を振り返って》
全体を通して、次世代を担う僧侶が、足下となる現場である「儀式をつとめる」ということの意義を再確認し、寺院存続の危機的現状を嘆くだけではなく、寺院を取り巻く現状を把握・共有し、伝統されてきた儀式を大切にしつつ、現状に新たな風を吹き込んでいくような姿勢で、悩み、試行錯誤しながら、僧侶の側だけでなく、門徒とともに各寺院における教化活動を行い、寺院を活性化していく機縁となったのではないかと思います。
(東京教務所)