長島から発信するということ

長島愛生園歴史館職員 玉田 美紗

  

 「こんにちは! 玉田です

 これは、私がSNS投稿をする際の決まり文句です。

 2022年4月6日は、私が初めて長島愛生園歴史館のSNSを投稿した日です。満開の桜の写真と共に、自身の名前を紹介した短い投稿には二百を超える「いいね!」が付き、歴史館の情報発信をしていくことが私の仕事になった記念すべき瞬間でした。

見学者とのフィールドワーク

 私が勤める長島愛生園歴史館は、多い時で年間12,000名を超える見学者が来館する資料館で、ハンセン病問題はもちろんのこと、その他の人権問題についても考えていただくきっかけとなるような研修を提供しています。

 日々、多くの見学者をお迎えしていたのですが、2020年度には3,700名まで激減しました。当時、素性の分からない新型コロナウイルスに私たちは翻弄され、様々な行動が制限されることとなったのです。そして、その影響を受けて各地の療養所が見学者を断る中、ここ長島愛生園は感染症対策を実施しながら見学者を受け入れ続けました(※緊急事態宣言中は閉館)。

 それはなぜなのか。そこには入所者の方々の想いが詰まっていました。

 「今後、同じような差別・偏見に苦しむ人を作らないでほしい」。

 その想いを伝えるためには、新型コロナウイルスにより差別・偏見を受けるかもしれない人を一人でも減らすことが大切だったのです。入所者自治会と長島愛生園の協力のもと、ハンセン病に対する差別・偏見と新型コロナウイルスによる差別・偏見を重ねながら、入所者の想いを学芸員が伝え続けました。SNS投稿が仕事となった私は、その様子を写真に収め、SNSで発信し続けたのです。

 開始当初、SNS発信についての心情を一言で表すなら「気を遣う」でした。単語一つとっても、目に見えない画面の向こう側の人がどう受け取るかを考えていたからです。しかし、その気持ちは、入所者と関わったり、仕事をしていく中で少しずつ変わり、「この投稿内容を必要としている人に届いてほしい。誰かの目に止まったらいいな。現地に足を運んでみたいと思ってもらえたら」と、そんな気持ちが日に日に大きくなっていきました。

 私の感覚ではありますが、ハンセン病問題を継承していくにあたってネックになっているのは、「身近ではない」という点だと思います。

 皆さんの周りに、ハンセン病の回復者の方はいるでしょうか。身近にないものを知るためには、興味を持ち、自ら知ろうとしなければなりません。

 私自身、歴史館に勤めるようになるまでは、ハンセン病という言葉は聞いたことがあるけれど、詳細はほぼ知らない状態でした。ご縁があって愛生園に通うようになり、今もまだ、少しずつハンセン病について知識を付けている途中ですが、初めて知った時は衝撃的でした。正直重い。そう感じました。

 また、「人権週間」や「人権啓発活動」と、「『人権』という言葉はよく聞くけれど、なんだか難しくて、私なんかが触れていい問題なのか」とも感じていました。そんな中、SNSで発信していくことが仕事になったのです。

 「重く、触れにくい問題」というイメージを元々持っていた私です。もし、過去の私と同じような人がハンセン病について知ってみたいと思うにはどんな投稿がいいだろうか。少しでも柔らかいイメージにするためにはどうしたらいいか。自分なりに以下のように考えてみました。

 ①正しい情報を発信すること。

 ➁自分の考えを押し付けないこと。

 ③分かりやすい言葉で簡潔に伝えること。

 ④文字ばかりにしないこと(画像や写真を使用する)。

 ➄どんな人に、どんな気持ちになってもらいたいのかを考えること。

 ①②は、SNSを使用して情報発信をしていくうえで最低限気を付けるべき項目であると思っています。③~⑤は、私が個人的に大切にしていることです。私が情報を届けたい人は、ハンセン病のことを知らない人たちなのです。

 私の経験上、興味の無いジャンルの文字ばかりの投稿は読む気になりません。そのため、私の投稿ではそれを少しでも緩和するために、写真や画像を多く使用するようにしています。それは、文字より目から入ってくる写真の情報が直感的で、「見よう」と思ってもらえるかもしれないからです。また、そこから文字情報に移った場合、難しい言葉を使っていると一気にハードルが上がり、たとえ投稿を見てもらえたとしても、読んでもらえない可能性が出てきます。さらに、重く、難しい情報ばかりだと、次の投稿閲覧へ繋がらないため、できるだけ画面の向こう側の人が私の投稿を読んだ時に「こんな人も見学に来ているんだ。踏み込みにくいと思っていたけど、そうでもないかもしれない」と前向きな気持ちになれるよう、内容や言葉選びに気を付けています。

 最後に、何よりも知っていただきたいのが、ここ長島に暮らす入所者の方たちは、差別や偏見の中を、強く強く生きてきた人たちということです。

 私は、たくさん笑い、人を幸せにできるような入所者の方しか知らないのです。すべての方がそうだとは言えませんが、少なからず、私の出会ってきた入所者はそのように感じました。

 今後、入所者が居なくなる未来が遅かれ早かれ訪れることが分かっています。その事実を受け入れたうえで、ハンセン病について全く知らない人たちに少しでも興味を持ってもらうため、次世代へ語り継いでいくために、SNSを使った発信をこれからも続けていくと思います。

 そして、歩みを止めないこと。前へ進み続けることが、入所者の方々の想いを継承するために大切なことだと切に感じています。これからの長島愛生園歴史館のSNS投稿を楽しみにしてください。

  

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真宗大谷派宗務所発行『真宗』2023年8月号より