お斎に込められた〝こころ〟
「お斎」とは、現在では広く仏事の際にいただく食事のことを言いますが、本来は寺院で生活する僧侶の食事のことを示す言葉でした。「斎」という字には「正しい」「慎み」という意味があり、慎み深く、行い正しい僧侶の食事のことを「お斎」と呼んだのです。そこから、仏事のあとにいただく食事のことも「お斎」と言うようになりました。
真宗大谷派の本山である真宗本廟(東本願寺) における「お斎」といえば、「報恩講」の際に振舞われるものが代表的です。
報恩講とは、親鸞聖人(1173~1262)の遺徳を偲び、その命日である11月28日に仏事を勤めたことに始まります。今も東本願寺では、毎年11月21日から28日までの七昼夜にわたって勤められる、もっとも重要な法要です。この日に合わせ、全国各地のご門徒が「れんこん」や「しいたけ」などを持ち寄り、一汁三菜のお斎を作ります。
その昔は、お斎で出された料理を、参拝できなかったご門徒のために各地方へ持ち帰り、皆でいただき、仏法に出遇えたことに感謝し喜びを分かちあったと言います。
このようにお斎とは、持ち寄った者の思いと、分け合っていただく者同士の思いが重なる、尊い食事なのです。
お斎は、殺生を戒める仏教の教えに従い、肉や魚を一切使わない精進料理です。しかし動物や魚だけでなく、野菜などの植物も「いのち」あるものであり、その「いのち」をいただいていることを私たちは忘れてはなりません。
食事というのは、私たちが「いのち」をいただき、「いのち」をつながせていただいているといういたみ・悲しみ、そして有難さを知る、大切な場なのです。だから私たちは食事をいただく前に「いただきます」と手を合わせ、「ごちそうさま」といたみをもって感謝するのです。
『お斎レシピ みんなでおいしい精進料理』(東本願寺出版)より
東本願寺出版発行『真宗の生活』(2018年版⑪)より
『真宗の生活』は親鸞聖人の教えにふれ、聞法の場などで語り合いの手がかりとなることを願って毎年東本願寺出版より発行されている冊子です。本文は『真宗の生活』(2018年版)をそのまま記載しています。
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