大井川が流れ、茶畑が広がる静岡県島田市に敬信寺はある。住職の谷本修さんは、大阪出身。以前は各地で教区駐在教導を務めていたが、いつかは入寺して、門徒さんと直接関わりたいという夢を持っていた。敬信寺前住職の伊藤滋さんが亡くなられた後、修さんの先輩が滋さんと懇意にされていた縁で、入寺の話が持ち上がった。まだつい五年前のことである。

    寺報でスーパーカブを紹介

 見知らぬ土地で、どのように門徒さんと関係を築いていくか。修さんの試行錯誤が始まる。この地域は月参りなどの習慣もほとんどなく、門徒さんとお寺との関係性が少ないため、不安も多かったという。そんな中、修さんの入寺を祝って、護持会から記念品が贈られることに。そこで修さんは、記念品としてなんと・スーパーカブ・を希望した。門徒さんのお宅を訪ねたり、寺報を届けたりする際に活用できると考えたからだ。創刊したばかりの寺報では、納車されたスーパーカブをユーモアたっぷりに紹介した。

 

 入寺以来、毎月欠かさず寺報を発行し、愛車に乗って、門徒さんに寺報を届けている。「今月の言葉」と、報恩講と公開講座の先生の法話を連載し、お寺に来られなかった方にも、仏法に出遇ってほしいと語る。「毎月の寺報は大変ではないですか?」と尋ねると、修さんは「毎月同朋の会で、『同朋新聞』と寺報を読んでいます。それがプレッシャーでもありますが、はげみになります」と話された。

         菜園での苗植え

 また境内の草刈りや剪定を通じて親しくなった門徒さんが、実は野菜作りのベテランであることを知り、その方たちと協力して、野菜作りを行っている。畑は境内地に隣接した約四十坪の土地だ。自由に参加でき、一緒に相談しながら手入れを行い、誰でも収穫することができる。収穫した野菜は、法話・清掃奉仕の後に、みんなで楽しむバーベキューやおでんなどにも活用される。

 また、坊守の(きみ)()さんの発想を活かす形で最近新たに始まった集まりが「まったりば」だ。同朋の会の座談でも女性が気ままにおしゃべりしているのを見て思いついたという。「正信偈」のお勤めと短い法話の後、自由な時間を過ごすことができる。机の上に絵本を並べたりして、ゆっくりのんびりできる居場所を提供している。

 他宗派が圧倒的に多い静岡県で、門徒さんとともに仏法を聞き続ける関係を築くのは容易ではない。そんな中でも「お念仏の教えにふれてもらえたら、と試行錯誤しています」と話す修さんの背中からは、それまでに出遇われた先輩方の存在が感じられた。

              門前で門徒さんとともに

(岡崎教区通信員・牧 仁志)


『真宗』2026年2月号「今月のお寺」より

ご紹介したお寺:敬信寺(住職:谷本 修)

※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しております。