■荘川桜 真宗本廟植樹式
2019年5月に勤修予定である高山教区・高山別院 宗祖親鸞聖人七五〇回御遠忌記念として、本日2017年12月11日(月)13:30より、阿弥陀堂南側境内において植樹式が執り行われました。
植樹されたのは、全国でも名高い「荘川桜」。この有名な桜の木は、飛騨御坊照蓮寺(高山別院)の開基嘉念坊善俊上人ゆかりの桜とも伝えられ、飛騨真宗の深い歴史の一つとしての顔も持つのです。
■荘川組・白川組のご門徒の声から
発端は、2010年6月末、高山教区荘川組・白川組の方々から「ぜひ、荘川桜を寄進したい」との申し出をうけたことに始まります。
しかし、飛騨の地から真宗本廟への枝分けには、樹木の根回りの手当てに7年もの歳月が必要でした。
■歳月を越えて後世に伝える
下準備だけに7年と聞きますと、効率化・合理化を重視する現代において、一つの事業にかける時間としてはあまりにも長く感じられると思います。
しかし、今回植樹される荘川桜は、500年以上の樹齢もさることながら、植えられていた土地がダムの底に沈むことになり、老木でありながら「移植」されて今に至るという経験を経ています。ダムの水の底に沈む村から老木が移植されるという世界的にも珍しい事業は、映画の題材としても取り上げられ、“故郷”を思わせるその桜の佇まいは、多くの人の胸を打ちました。
実はこの荘川桜、御母衣ダムの底に沈んでいる真宗の寺院、照蓮寺・光輪寺の建立の際に植えられたと伝えられています。飛騨の地の人々の、たとえ集落は沈むことになろうと、この幾代にもわたって愛してきた桜の樹だけは残していきたいという思いが、有名な移植事業を実現させました。
「この樹をお受けするということは、飛騨真宗の念仏の歴史を伝えてきた篤き願いを大事にされてきた方々の思いを、真宗本廟がお引き受けし、後の方々へ伝えていくという御勝縁であります」
と、真宗の教えが時代を越えて伝えられていくことへの正縁であると挨拶されました。
これを受け、高山教区・高山別院宗祖親鸞聖人七五〇回御遠忌推進委員会委員長である小原正憲氏からは、
「照蓮寺・光輪寺のお念仏を聞きながら育ってきたのが荘川桜です。このお念仏の息のかかった桜を本山に植樹できることは意義のあることです。
また、飛騨の地に訪れ、真宗念仏の王国になった歴史を礎を築いてくださいました嘉念坊上人は親鸞聖人のお弟子でした。ですから、この桜の植樹をもって、嘉念坊上人が親鸞聖人のもとに戻られたように感じます。桜の歴史が本山に刻まれたことが嬉しく思います。
これから飛騨の真宗門徒の合言葉は、“本山の桜は咲いたかな?”と、お参りがてら桜を見に行くことになると思います。この地に根付き、立派な桜の花を咲かせることを願います」
とのご挨拶をいただきました。
その後、門首、総長をはじめ、高山教区・高山別院をはじめとする御遠忌関係者による鍬入れ式が行われ、宗務総長から三島多聞高山別院輪番へ感謝状が手渡されました。
最後に、荘川桜の植樹に長きにわたり尽力された、蓮勝寺門徒、荘川組組門徒会長であり、参議会議員でもある渡邉登氏より、荘川桜と開基嘉念坊善俊上人に始まる飛騨真宗の歴史を交え、ご挨拶いただきました。
中でも、
「照蓮寺には、第13代宣如上人のご息女が輿入れされたという歴史があります。しかし、豊かではない厳しい飛騨の地を生き抜かれ、35歳で病気により京都に戻られ亡くなられました。この歴史を激動の時代を生きた荘川桜と重ねますと、植樹した荘川桜が元気に真宗本廟で花を咲かることを思うだけで、里帰りしてもらえたような感慨深い思いがあります」
と、あらためてこの荘川桜を真宗本廟に植樹することに込められた飛騨真宗門徒の思いを語ってくださいました。
飛騨真宗の念仏の歴史と、そして人々の思いとともに植樹された荘川桜。春には真宗本廟に参詣される方に、その歴史を思いを伝える花を咲かせてくれることでしょう。