「尾張はじまり講」による御華束の奉納

蓮如上人の姿が描かれた掛け軸「御影」を歩いて運ぶ「蓮如上人御影道中」が今年も終わりました。今年はひとつの変化がありました。それは、愛知県一宮市周辺の門徒でつくる「尾張はじまり講」の方々が、御忌法要のお供えである御華束(おけそく)を製作し、吉崎別院の本堂に奉納してくださったことです。どのような背景があるのか。お講の事務局を務める愛知県一宮市の西恩寺住職の藤原猶真さん(名古屋教区第4組)に尋ねました。

尾張はじまり講のみなさん。吉崎別院にて

■はじまりは推進養成講座

きっかけは2015年から3年間行われた推進員養成講座でした。同講座は熱心な門徒を生むために集中して勉強する機会を設けるものです。しかし、これまでの講座の在り方を見て、「みんなで勉強しても一過性で終わるかも」と頭を悩ませていた藤原さん。そこで思いついたのが体験型の講座でした。愛知県内で既にある講に参加してみようということで、

丹羽郡十八日講(名古屋別院に御華束などを奉納する)
尾張清浄講(東本願寺ですす払いをする)
蓮如上人御影道中

の3つに参加する講座を企画しました。

背景には2010年に西恩寺で営んだ蓮如上人五百回御遠忌があります。開催後、門徒から「蓮如上人の御影道中にも行ってみたいな」という声が上がり、何年かにわたって有志で道中を歩いたそうです。

推進員養成講座は、1寺院につき2人という枠をやめ、有志の参加者を募りました。70人が名乗りを上げて、お講や道中に参加する中で、約40人が残ったそうです。

同講座では最後に東本願寺の境内にある研修施設に泊まり込むカリキュラムがあります。そこでは最後に自らの宣誓文をつくります。そのとき「新しいお講を立ち上げよう」という声が上がったそうです。それを受けてできたのが「尾張はじまり講」なのです。名前は「尾張(=終わり)」と「始まり」を掛けて、ここから新しく始めようという気持ちを込めたそうです。

 

■ただ参加するのではなく

尾張はじまり講は

御影道中への参加
東本願寺のすす払いへの参加
年1回の門徒講座

の3つの内容で運営されています。

昨年は20数人で御影道中に参加し、吉崎別院での到着を待ち受けました。そこで見かけたのが吉崎別院にある御華束でした。尾張地方では御華束は基本的に手作り。

「吉崎なのに、つくりもんおいてるだ。われわれで御華束をつくってみよう」

10数人ぐらいの講員が手を挙げて、今年御華束を手作りして奉納することになったそうです。

尾張はじまり講・御花束つくり
尾張はじまり講・御華束

藤原さんは言います。

「ただ行事に参加するだけでなく、奉納するということが大切なことだと感じた。ただその場に行くよりも、懇念を運ぶ過程を大事にしたい。何か始めるときに『続けなきゃいけない』と思うと、何もしないことになりがち。まず今回できた。次回も。1年1年、皆さんの意見を大事にしていきたい」

 藤原さんは、推進員養成講座というカリキュラムが生みだそうと願う門徒の姿は、既にお講が描いているものだと感じています。「だから、お講を再現した方が近道だと思った」と語られます。お講では、檀那寺にこだわらない門徒の集まりが生まれます。これもお講の特色の一つでしょう。藤原さんは「お寺の枠を超えて門徒のつながりをいかに作り出せるか。これからの課題です」と語ってくれました。

(福井教区通信員 藤 共生)

尾張はじまり講・御華束つくり

尾張はじまり講・御華束つくり

尾張はじまり講・御華束つくり