明圓寺は山形駅から車で約20分。山形市南西部の二位田にあります。この地は本沢地区と呼ばれ、山の傾斜を活かしたぶどうの里として有名な地域であり、お寺の駐車場からは広大な田園風景を望むこともできます。そんな自然豊かな地に1677年本堂が建立され、一度も焼失することなく現在に至ります。住職の本澤盛正さんにお話を伺いました。

天井一面に花の絵が描かれる本堂

本堂に入るとまず天井一面の花の絵に目を奪われます。描かれたのは先々代住職で、落雷の被害により屋根の修復を行った際に、寄付をいただいたご縁ある方々への返礼として描いたとのこと。寄付をいただいた方に合わせて描かれたので同じ絵は1枚もなく、絵が残ることでご支援いただいたことを子や孫へ、世代を越えて伝えていけるということです。

また、今年明圓寺で勤まった「大谷講」についてもお話を伺いました。大谷講とは、山形県内の内陸地方で勤められる納骨法要です。山形県は京都まで遠く、移動が困難なことから、毎年組内門徒からご遺骨をお預かりして合同で法要を行った後、会所寺院が取りまとめて大谷祖廟まで納骨にいく習慣が古くからありましたが、新型コロナウイルスにより法要も休止となっていました。


しかし今年から行動制限も緩和されたので、納骨希望者を集い明圓寺として「永代経」と併せて「大谷講」を勤められました。住職は「納骨っていうのは収めたら終わりではなくて、納骨してまた新たな出遇い方が始まる。一つの始まりがそこにあるんだ。残された人が新たにスタートに立ってもらうように儀式執行するのが寺の役目ではないか」と語られます。今後は団体参拝も考え、以前祖廟に納めた方にも再度声をかけ、亡き人を通して一緒に手を合わせる機会を作りたいとのことです。

法話の様子(大谷講・永代経)

大きな法要だけでなく、毎年のお盆やお取り越し報恩講でのご門徒宅へのお参りも大切にしています。顔を合わせての何気ない会話から気になることや悩みを聞くきっかけにもなり、また、大谷講を勤める契機になったのも、「住職、京都いつ行くんだ? 声かけてくれよな」というご門徒の声だったとのことです。

表白を拝読する本澤住職(大谷講・永代経)

仏事を通して人とふれ合うことを大切にされる住職。以前経験された嘱託補導や子ども奉仕団スタッフといった本山での活動が大きかったということで、「全国のご門徒や僧侶と出会う中で、どうすれば振り向いてもらえるかをよく考えるようになった」とのこと。また、自分の思いだけが先走ってしまっては相手の重荷になるのではないかという思いから、「仏事も寺の押し付けになってしまい「寺は敷居が高い」とご門徒から言われないよう、どのようにして人に寄り添うかが課題である」と語られます。


「今まで行ってきたことをアレンジしながら、人と出遇いふれあえるお寺を開いていきたい」と話す住職がとても楽しそうに映りました。

(東北教区通信員・佐々木智悠)


『真宗』2023年8月号「今月のお寺」より

ご紹介したお寺:東北教区山形第2組 明圓寺(住職 本澤盛正)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。