兵庫県のほぼ中央にある朝来市生野町は、播磨と但馬の中間地であり県南北の分水嶺。生野銀山を中心とした鉱工業により町は発展し、山に囲まれた谷あいの町に日本家屋や明治以後の建造物が現存する。鉱山は1973(昭和48)年に閉山されたが、当時の雰囲気を残している。そんな町の中に、お寺が横並びに8ヵ寺あり、その一つに400年程の歴史をもつ教德寺がある。
境内に入ると、住職の瀬田崇さんが作務衣姿で掃除をされていた。彼岸会法要と総代会が行われる日にもかかわらず快く迎えてくださった。
住職になられたのは2年前で、伯母の前住職、佐竹薫さんより引き継ぐ中、「同朋会」を発案し、ご門徒方もコロナで中断していた学習会の延長として行おうと、この4月から活動を再開された。
「ご門徒の方々が、自分達のお寺だからという思いで足を運ばれ、様々なご提案をいただけることは有り難く、お寺が大切にされてきた表れと感じます」と住職はおっしゃる。
ご門徒方は前住職の在任27年間に発行してきた寺報「無碍光」(全112号)を退任記念として形に残るよう、1冊の本にまとめられたそうだ。現住職も寺報「灯炬」を発行しており、また自分たちの世代にも届くようにと、新たにインターネットでの発信も始めている。
お寺が大切にしている行事のひとつに、7月の夕涼み会がある。ご門徒以外にも開いている夏祭りのため、100名を超える大人や子どもたちが集まる人気の地域行事となった。
「私は掃除が好きなこともあって、夕涼み会の実行委員の方に『ふたりのパンタカ』の紙芝居を、本堂で子どもたちに向けて読んでいただきました。掃除って身近でわかりやすいと思うんです。自分が使っている場所を掃除すると、そこが少し輝いて見えて、綺麗になると心も晴れやかになって心地いいですよね。その体験をいろんなことに応用してもらいたいです。敬いの心を持ち、様々な人と共存する関係を構築する上でも良い方向に繋がっていくと感じます。お寺で聞いた話だったり、お寺に足を運んでいただいたことを縁に、自分の心を見つめていただければ幸いです」と住職は語られる。
今回お話を聞かせていただいて、住職と前住職がお2人とも口にしておられたのが「ご門徒方や地域に助けられて」という言葉だった。それに応えるように、ご門徒と共に地域のお寺という在り方を考え続けておられるのだと感じた。
(京都教区通信員・治田 保男)
『真宗』2023年11月号「今月のお寺」より
ご紹介したお寺:京都教区但馬組 教德寺(住職 瀬田 崇)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。