福岡県筑後市にある淨弘寺は、現在、本堂の大規模な改装工事が進められており、完成は2年後とされています。ご門徒の皆さんは、その新しい本堂の姿を「楽しみやね」「完成するまで元気でいなきゃ」と口々に語り、その完成を心から待ち望んでいらっしゃいます。そんな淨弘寺のご門徒の皆さんには、【金曜講】という集いの場があります。

【金曜講】は、毎週金曜日の朝9時半からお昼の12時まで行っています。現在は10人ほどの方が、参加できる時に無理なく参加されているようです。実は、このお講は最初から大きかったわけではありません。門徒会館の建替えを行った際、新しくできた休憩室を活用できないかと、9年前に1人のご門徒さんが「一人お講を始める!」と宣言されました。その時から始まったお講です。
二人講・三人講と参加者が増えた頃、休憩室を誰もが、お茶やコーヒーを飲めて、用がないのに気軽に立ち寄れるフラットな空間にできたらいいねという思いから、「喫茶ふらっと」という呼び名になりました。参加者が増え始め10人を超えた頃、名称を変えようということになり、参加者の皆さんで話し合われ、「講」という言葉は大事にしたいということで、毎週金曜日に開催されることから「金曜講」と名付けられました。また、「喫茶ふらっと」の名は、現在、女性門徒の方々が中心となって発行している広報誌の名となり、「ふらっと」として親しまれています。寺院と門徒が一緒に育ててきた名前であり、その歴史や温かさが自然と伝わってきます。

ご門徒さんがふらっと立ち寄り、ご住職や坊守さんとお茶やコーヒーを飲みながら過ごす憩いの場は、雑談したり、声明を練習したり、生活の中で疑問に思ったことを尋ねたり、悩みを相談したり、ご門徒同士で世間話をしたり——とても自由で、安心できる空間になっています。
この日、参加されていたのは9人。皆さんの様子を見ていると、ご住職と坊守さんがそっと寄り添い、優しく見守る姿がありました。その眼差しに安心しているかのように、ご門徒の皆さんは穏やかにその時間を楽しんでおられました。まるで家族のようでもあり、長年の信頼で結ばれた仲間のようでもあります。

話題は自由に飛び交います。女性門徒の会主催の研修旅行で四日市別院へ行った時の話。地域によっては各家庭に必ず『御文』が置いてあるという話。明治の頃に京都で買った『御文』が当時の値段で1円だったという昔語りまで、時代もジャンルも越えた会話が次々と広がっていきます。
特に印象的だったのは、ご高齢の方々がスマホを積極的に使いこなしていたことです。その使い方を教えているのは、二人講の時から参加されている総代・中島靖孝さん。皆さんから親しまれ、「まるで学校の先生みたい」と言われ、「中島先生」と呼ばれているのが微笑ましく感じられました。



お講の参加者には、それぞれに得意なことがあります。その中のお一人に民謡の得意な方がいます。その民謡を聴きたいという声が上がり、中島さんが発起人となり、「淨弘寺の楽しい集い」が開催されるようになりました。民謡、お謡、フラダンス、ハーモニカ、そして住職さんたちによる歌などが披露されます。毎年少しずつ参加者が増え、とても素晴らしい会が続いています。
最年長の貝田チヅミさんはこう語ってくださいました。「ご住職が、“世間のことはよくわからん”ておっしゃるでしょう。それで私たちが世間の話をしたら、『教えではこうですよ』って言ってくださるんですよ。そしたら【教え】と【世間】の違いがよくわかってね、【教え】がいっそう身に入ってくるんです。それが嬉しいんです。【教え】は自分を教えてもらえますから、私は何よりもお寺で語り合う時間を楽しみにしています」。
その言葉には、淨弘寺がどれほど温かく、人とご縁を結ぶ場所であるかがはっきり表れていました。淨弘寺は、住職、坊守、ご門徒の皆さん、そして地域と共に、楽しみながら「教え」が染み込んでいく、あたたかいお寺だと感じました。

(九州教区通信員 本田智子)




























