9 怠らずに努力せよ

僕はただの人間です。人間がたまたま絵を描いている、インドの美術の研究をしている。そのための努力ということは、できる限り、頭がぼけない限り、努力をしようと思っているのです。皆様の中には絵を描くのは気ののった時ぐらいと思われている方がおられるかもしれませんが、実はすべての仕事と同じです。スポーツと同じなのです。少しでもトレーニングを休むとなかなか元に戻りません。日々の努力や精進が必要なのです。できる限り、本当の生き方のプロになりたいと思っています。そのために必要なことは、お釈迦さまの言葉、親鸞聖人の言葉、このことをいつも自分の中で念頭に置くのです。何かをするとき、何かを考えるとき、その言葉を考えながら制作するようにしています。分からないとき、困ったとき、解決への導きとなる言葉は必ず仏典に出てきます。そのことが、僕の依り所だと思っているのです。

お釈迦さまが涅槃に入られるときにおっしゃったお言葉は、「物事は移りゆく」、「怠らずに努力せよ」、これがお釈迦さまが涅槃に入られるときの最後の言葉とされています。僕にはその言葉が自分の一つの指針となっているのです。人間の才能というのは問題になりません。たいしたことはないのです。99%は努力です。残りの1%はもって生まれた才能とつちかってきた努力です。出来る限り怠らずに努力していきたい、というのが僕の気持ちであり、僕の行いでありたいと思いながら日々生きて居います。絵を描くことはいかに生きていくかということ、いかに死んでいくかということの私自身への問いなのです。ありがとうございました。

 

2011(平成23)年10月2日 高倉会館日曜講演抄録「ともしび」第714号
「絵を描くことで仏教を学ぶ」
講師 畠中光享(はたなか こうきょう)日本画家・大谷大学非常勤講師

高倉会館では、毎週日曜日に、日曜講演を行っております。
日程については東本願寺公式ページ内ををご覧ください。

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講読のお問い合わせは「東本願寺出版部」075−371−9189まで。