2003(平成15)年 真宗の生活 6月 【縁起】
<別れの理由>
「遠距離恋愛だけど続くのかな」。この質問にある人が答えました。「恋愛には二種類しかないんだよ。一つは遠距離恋愛でも続くもの。もう一つは遠距離恋愛でだめになるもの」。そして「君の恋がそのどちらかは、誰にもわからないけどね」。
仏教では、ある結果について、すべてのものが原因(因と縁)であると言います。一つには、ある結果が出るのに、それを「邪魔しないもの」も原因だということです。ほんの少しの違いでその「邪魔しないもの」も、影響のある原因に変わり、違う結果が出ていたかもしれません。それは私たちにはまったく把握できないことです。
恋愛のことで言えばもう一つは、出会わなければ別れもないし、自分が生まれていなければそんな恋もない、突き詰めれば、「自分がここにいる」、「世界がある」ということ、それもが原因になるということです。言われればその通りですが、普通はそこまで考えません。
遠距離恋愛がだめになった人は、その距離を理由にしがちです。でも、距離が離れていることは一つの条件で、それに耐えるだけの関係があれば続くし、そうでなければだめになる、それだけのことです。でも、それは、結果からしかわからないのです。さまざまな原因をすべて把握することもできなければ、自分の気持ちがどうなっていくかもわからない。まったく頼りなく、危ういことですが、結果からようやく自分のことを知る、という以外に私たちのあり方はありません。
『真宗の生活 2003年 6月』【縁起】「別れの理由」