2003(平成15)年 真宗の生活 10月 【罪】
<戦争は罪悪である>
昨年の米国の九・一一事件を契機に、アフガンヘの報復戦争が始められ、多くの人々が不安と絶望の中で暮らしています。日本は、後方支援と称してインド洋に自衛隊を派遣。首相の靖国神社参拝や、有事法案制定の推進という流れから、再ぴ戦争への環境整備が進んでいる危惧を感じます。
一方、日本の侵略戦争の賠償や補償を求める裁判が、六十六件も提訴されています。一九九〇年以降の提訴が多く、傷が癒え生活を回復し、人間関係も紡ぎ直し、その被害の罪と責任を問うまでに戦後五十年近い歳月が必要でした。戦争被害の深刻さと同時に、戦争犯罪や罪責にあまりにも無関心な、私たち日本人の姿が透けて見えます。私たちは恥に対しては敏感ですが、罪に対しては全く鈍感ではないでしようか。
一九三七年七月七日、日中全面戦争が勃発。敵都南京攻略のため各地から若者が召集されます。大谷派の僧侶・竹申彰元師の村でも、総出で出征兵を送ります。道すがら、「戦争と云うことも昨日も千人今日も三千人と云う様に沢山な死傷があって悲惨な事だ」、「戦争は罪悪であると同時に人類に対する敵であるからやめたほうがいい」と語られます。聖戦というが戦争は悲惨な罪悪であり、戦場に向かう青年に「やめた方がいい」と語られたのです。師はこの言動により逮捕、禁固刑に処せられます。私たちの教団も師の志願に耳を傾けることなく、多くのご門徒を戦地に送り出しました。
「戦争は最大の罪悪である」、この言葉は、過去の悲惨を見据えた中から、混迷を増す現代社会を照らす一縷の光として届けられています。
『真宗の生活 2003年 10月』【罪】「戦争は罪悪である」