「同朋会運動について」と題した基調講演

■聞法の場の現況を知る

2015年10月1日、富山別院を会場に「富山教区 組門徒会・同朋の会合同研修会」が開催されました。富山教区の門徒研修小委員会では、2015年度の教化目標として「一ケ寺一同朋の会の結成」を掲げています。今回の研修会はこの取り組みの第一歩として、寺族・門徒会・同朋の会の代表者が集い、それぞれの聞法の場の現況について情報交換が行われました。

当日は、全組から住職も含めて60名が参加しました。午前中は教務所長から「同朋会運動について」と題した基調講演と各会の代表者による活動の実態と課題の報告がありました。
午後の班別座談会では、午前中の報告を受けて、自分の会と他の会とを照らし合わせながら、一ケ寺一同朋の会の結成にあたっては僧侶と門徒の協力が必要であることや、「ターミナルケアやビハーラも聞法会の形だろう」など多岐にわたる意見交換がなされました。

閉会にあたって副幹事の野田さんから「どの班でも坊さんは何をやっているんだ、言ってることが難しい、ということが出ている。僧侶はこれを真摯に受け止めなければならない。一方、門徒さんも住職にそういう思いを伝えていってほしい。僧侶は自分で気づけないところが多いので、そういう意見をいただければ大変ありがたい。これで終わりではなく、今後はこの研修会で得たことをそれぞれの場で役立てていってほしい」との挨拶があり、本研修会を一ケ寺一同朋の会の結成にむけた第一歩としていくことが確認されました。

 

■同朋の会の現状報告

報恩講前には会員でおみがき
報恩講前には会員でおみがき

○11組 玉永寺同朋の会(報告者:石川正穂さん)
 昭和30年代、同朋会運動の始まりとともにスタートし、紆余曲折を経て現在に至る。現状、案内は30人程に出し、毎回15人ほどの参加がある。年6回3月から9月、第4土曜日の午後2時から4時まで開催。『書いて学ぶ正信偈』をテキストにしている。勤行、お話、茶話会。8月に暁天講座。報恩講前には会員でおみがき。人数の増減を繰り返している。推進員養成講座が行われる度に同朋の会会員も増える。推進員だけでなく近所の方や遠方の意欲のある方など、バラエティに富んだメンバー。

 勉強会をしたり旅行をしたこともあったが、今は難しいことをせず茶話会にしているので長続きしている気がする。必ず信仰談義や出席をしなければならんというのを止めたので長続きしているのでは。養成講座を機に新しい方に入ってもらわないと続いていかない。メンバーの固定化・高齢化が進んでいるので、参加等は自由にしないと長続きしないのでは。

 以前は近所地域の講があり、地域の力がお寺を支えてくれていたが、高齢化・過疎化で衰退していった。これからは、同朋会(個人参加の集まり)がお寺を支えていくと思う。

○12組 勝福寺凡愚の会(大中臣千恵美さん)
 斎場葬儀が一般化するようになり、ご門徒の寺への関わり方が合理的になってきたように思う。同時に寺の行事への参加者は年々減少し、行事そのものの存続が厳しくなっている状態である。俗にいうイベントなどで員数集めを試みるも一過性のものでしかなかった。

 そこで真宗の原点に立ち返り、聞法会「凡愚の会」を2005年より始める。年4から5回の開催で、東京雲集学舎の大島師を講師としてお招きし聞法を続けている。会員は20名。参加者は毎回15名ほど。午後6時より8時までの法話のあと、引き続き茶話会と称した飲み会が始まる。坊守の手料理を中心に賑やかな酒盛りとなるが、当初は聞法より飲み会に力が入り本末転倒。一時、どうしたものかと悩んだが最近では法話で聞いたことが飲み会で語られるようになってきた。時間の経過が大切だと実感する。

 また、参加者の3分の1が女性で、その中から女性だけの会を作ろうという声が上がり、2013年6月に「豊柔の会」を立ち上げた。月1回、第3土曜日にコーヒーとケーキをいただきながら坊守が日常の中で感じたことを話した後、座談をする。会員17名で毎回欠席者がほとんどいないことには驚いている。当初はなかなか自分のことを語ることは避けていたが、誰もが問題を抱えていることに気付くことで最近では気兼ねなく愚痴の言える集まりになってきた。このことは「個人の問題」ではないということに気付いた大切なきっかけだと思う。とにかく結果を急がず継続していくことが大事だと思っている。

○13組 正覚寺同朋の会(小塚弘道さん)
 月1回、28日の午後7時30分から開催。特に案内は出さず、掲示板に掲載。地域の過疎・高齢化・価値観の多様化・自身が駐在教導をして自坊のみに集中できなかったことなど様々な要因が重なり、同朋の会も一時休止してしまった。

 寺に帰ってからは隔月で同朋会を復活させたが、毎月にしようという声を受けて変えた。ここ3年で、毎月28日の午後7時30分という時間を定着させてきた。地域ではお講は消滅してしまったので、なおさら同朋の会は続けようと思っている。以前は『真宗の生活』をテキストにしていたが、字は小さいし、読むだけで時間もかかるので、今は法語カレンダーのことばから感じることを話をしている。その後コーヒーなど飲みながら質問を受ける形でやっている。

○9組同朋の会(山下会長)
 毎年2月から11月の毎月1回、土曜日午後2時から3時30分に開催している。土曜だと住職が出づらいということが課題。参加者は15名。多くの人に来てもらいたい。講師は高岡教区のお寺さんに来ていただいている。参加者から話を聞いているだけではだめで座談会をしようという声があり、3年ほど前からは法話1時間、座談会30分の日程で開催している。

 その他、7月に総会を開き事業報告・予算決算報告。11月には報恩講をやっている。隔年で日帰り旅行を行っている。会費はいただく。その間の隔年は、お勤めやお内仏お給仕の講座をやっている。だから毎年何かの行事を行っている。もともと西光寺同朋の会が母体だったのだが、色々あって第9組同朋の会学習会と名称変更をしてやっている。

○10組同朋の会(前会長・岡本武勇さん)
 富山小会では親鸞教室を毎月教務所で開催、野下小会では野下同朋の会聞法研修会を毎月5カ寺持ち回りで行っている。1カ寺1同朋の会が理想だが、このように何カ寺かでまとめてやる方法もあるのではないだろうか。

 さて10組の同朋の会では、「一カ寺一同朋の会の結成」を目指して準備を進めてきた。これは昨年から話し合いをし、寺族門徒合わせて21名からなる委員会を立ち上げて行っているものである。和田組長の発案で組内寺院にアンケートを取ったところ、同朋の会立ち上げの意思がある寺院が13カ寺あることも分かった。そして今年8月の組会教化委員会では、一カ寺一同朋の会結成推進が、正式に決定された。寺・同朋の会・門徒会で一緒になってやっていこうとしている。来年からは10組の推進員養成講座も始まるので、それとも連携してゆけばさらに効果が期待できると思う。

 宗務総長の演説にもあるように、寺が一カ寺一同朋の会結成を通してもっともっと活性化していかないと、2023年に迎える宗祖誕生850年・立教開宗800年法要も満足に勤められないのではないか。富山教区ではこの一カ寺一同朋の会結成を念頭にこれからの取り組みをやっていきましょうと申し上げたい。

■関連記事
「富山教区第10組一ヶ寺一同朋の会結成促進委員会」開催

 ○11組同朋の会(岡部会長)
 自分自身は30年前に誘われて組同朋の会に入った。毎月18日に開催している。28日はお寺さんが忙しいということで期日を引き上げたと聞いている。以前は組門徒会の方も入っていたのだが、7~8年ほど前から入ってくれなくなった。今、会員は20名ほどだが実際の出席は10人、5人とだんだん減ってきている。来年11組の推進員養成講座が始まるので、その方々に同朋の会を引き継いでいただきたい。講師は石川先生にお願いをしており、『歎異抄』から三部経すべてを習い、今は正信偈を習っている。今後は多くの方が出席できる同朋の会にしていきたい。

○12組同朋の会(尾山会長)
 50年前から先輩たちによって継続されてきている。成文化された規約がなかったので、教区の規約を参考に新たに規約を制定した。メインの事業は聞法会の開催。内容は、「親鸞聖人の教えに学ぶ」「歎異抄」などのテーマを若院さんに解説してもらい、学校の教室方式で行っている。年11回の聞法会、年1回の研修旅行を開催している。運営資金は組から補助20万円、会員の年会費1000円、毎回の参加費300円で賄っている。

 悩みは、年々参加者が減少していること。これにはお寺さん方も危機感を持っており、組の同朋大会のチラシをつくって配布したりしている。昨年は推進員養成講座があり、住職さんではなく若院さん方を中心に運営してもらい、推進員となった方々には同朋の会に入ってもらうよう働きかけた。その結果か、新たに10名の方に入っていただいた。

 会員は現在35名で、実際の出席は約20数名である。この35名の所属寺は10カ寺に集約される。12組には52カ寺あると聞いているが、門徒が無いとか極端に少ないお寺を除いても25カ寺あるので、もっとやれるのではないか。今後さらに発展させるために、1つには若院さん方の力を借りること。2つには同朋の会員が0というお寺がたくさんあるので、1カ寺から1人でも出てもらうこと。これを目標としたい。推進員養成講座が10年に1回から5年に1回になったことで、会員の増加に有効で大変ありがたいと思っている。

○13組同朋の会(高見会長)
 会員は105人。推進員の方が大半であるが、組門徒会のメンバーなども混在している。学習会は3・6・9・12月の年4回。12月は年末の懇親会を兼ねてやっている。会場は各寺持ち回り。講師は明光寺野田さんにしていただいて、正信偈を一字一句勉強をしている。時間は日曜の午後1時30分から3時30分。会費は年間1500円。大会もやっており、このときは著名な講師を招くので、会場寺院が満堂になるほど参加してもらっている。

 課題としては、会員は105名だが毎回の参加者は30から40名ぐらいであり、そして年会費も105名中70名くらいの方にしか納めてもらっていないこと、会員の中で女性が2割程度しかいないことなどが挙げられる。

■班別座談会報告

○1 班
・同朋の会・門徒会・推進員は組織の上では役割が違うが、聞法という1点においては同じであり、一緒に活動しても何ら問題ないと思う。
・総代をしているが、門徒会や同朋会の区別がつかない。関わった以上、そのへんをきちんと把握しなくてはいけないと自分で思う。
・寺が地域の中心となり、人々が集まる場所となってほしい。
・一カ寺一同朋の会を進めるには様々な困難な事情があるが、住職が前向きになれるようどうサポートしていくか、模索していきたい。
・住職というのは自坊のことだけ考えてしまい、なかなか地域のことまで考えが及ばない。地域の問題に応えていくためには、門徒の意識も高めて門徒の方からも支えていかなければ、住職1人では難しいのではないか。
・地域の中で寺と寺の協力体制が必要だ。他の手次寺の聞法会などにはなかなか参加しづらい現状がある。地域としての活動を通すことによって、その敷居の高さを克服できないだろうか。
・お寺に足を運んでもらうには、門徒の力だけでは到底難しい。住職の熱意が必要だ。

○2 班
・各地の同朋会を1つにしてはどうか。自分は様々な役職を兼ねていて、すべての聞法会に出るに出られない。
・関東のあるお寺では門徒主体で運営しており、敷居が低く我が寺という意識がある。そのため寺の活性化につながっている。
・一カ寺一同朋の会というが、地域に合わせた色々な形が考えられると思う。
・若い人への接点として寺を公開し、お遍路さんのように見学できるようにするのもよいのではないか。
・もっと身近な視点から法話をしてほしい。生活を通さない学問的な話をされてもわからないし、そうなると聞きに行く気もしない。昔の坊さんは、まだ分かりやすい法話をしてくれたと思う。

○3 班
・一カ寺一同朋の会は方向性の1つであり、地域の実情に合った聞法会の形を取るのがいいだろう。
・ターミナルケアやビハーラも聞法会の形だろうし、門徒の方からこんな聞法会がやりたいという提案をしていってもいいと思う。
・坊さんの法話力不足が指摘される。今一度聖教を読んでいくところから始めるしかないのではないか。
・聞法会の情報を、組の集まりや教区などもっと広い範囲で共有していくとよいのでは。
・坊さんが勉強して教える側になるのではなく、自らも教えられる側であるという立ち位置を忘れてはいけない。
・単にお寺へ来てね、と言うだけでなく、近所の人を車に乗せて一緒に行くなど具体的な誘い方をしたことが参加者の増加につながった。

○4 班
・門徒会・同朋会・推進員、どこがどう違うのか分からない。それに対して、自分はハッキリ区別をつけて集まりに出席しているという意見も。
・会社など今まで生きてきた世界とお寺の世界が違うので関わりが難しい。
・推進員養成講座がとても良かった、もっとやってほしい。同朋の会員の増加にもつながる。
・集まりを会員制にすることが門戸を狭めることにつながってないか。誰でも、真宗門徒でなくとも来られるようにしたら良いのではないか。
・住職方が当たり前のように使っている専門用語が分からない、もっと分かりやすい言葉をつかってほしい。他宗では絵やマンガとか、インターネットのホームページなどを使って細かく分かりやすく説明しているところもある。
・法話の後に質問の時間がほしい。門徒の発言の場があればさらに良い。
・今回の研修会で、各組や地域で様々な現状や特徴があるのが分かって、とても良かった。

○5 班
・専門用語が分かりづらく、せっかくレジュメなどをもらっても分かりにくいことが多い。同朋の会・門徒会などの違いも分からない。
・お寺が、門徒の集まる場になってないのではないか。僧侶がもっと社会性を持って門徒と接していく必要があるのではないか。まず人と人が交流しつながっていく中で、同朋会ということも発展していくのではないか。
・百人百話でも感じたが、もう少し現実の中から法話をしてほしい。もっと勉強してほしい。