日本の大都市に数えられる名古屋市の中心部に位置する名古屋別院で2016年4月22日(金)~24日(日)、4月26日(火)~5月1日(日)に勤修された「真宗大谷派名古屋教区・名古屋別院 宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌法要」。多岐にわたる行事や法要に込められた願いをいかにして次世代に、そして参拝者に伝えていくのか。こうした視点から工夫された御遠忌での取り組みをご紹介します。
すべての法要に解説付きの勤行本を配布
~堂内全員が参加できる御遠忌に~
【真宗大谷派名古屋教区・名古屋別院 宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌法要】
御遠忌HP:http://www.ohigashi.net/goenki/
◆都市型教化の拠点として
名古屋市の中心部に位置する名古屋別院でお勤めするとあって、一般市民や青小幼年にアピールし、「現代の寺内町」として別院が再生することを願いに、都市型教化の拠点として役割を果たす記念行事が企画された、「真宗大谷派名古屋教区・名古屋別院 宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌法要」。
現代の社会問題と密接に結びつく継続性のある行事となるよう、地域の人々が集う場となることを重視。「ともに生きる―いのちのつながり―」をテーマに、地域や名古屋別院と関係ある方々と、多彩な感覚を行事に反映できるよう事務局を設置し、6部門600名に及ぶ委員が企画運営に携わりました。
※ 写真左から鸞恩くん、蓮ちゃん、千鶴ちゃん、オケゾッくん、あかほんくん。
御遠忌を機に誕生した、人々に親しみやすい雰囲気を提供する御遠忌キャラクター「千鶴ちゃん」は一般公募によるもので、最終選考も掲示による一般投票で決められました。子ども御遠忌や稚児行列への参加やオリジナルグッズの販売により、参詣者の記憶に残るキャラクターとして、現在でも法要やイベント、縁日に参加するなど、名古屋教区・名古屋別院のキャラクターとして地域に愛される存在になっているそうです。
また、キャラクターの作成だけでなく、「御遠忌」という言葉になじみの薄い一般の方に、「御遠忌」がどのような行事であるかということを想像してもらえるように、イラストレーターのまつやまたかし氏にイメージイラストの制作を依頼。御遠忌をお迎えする名古屋別院の境内の雰囲気を表現していただいたそうです。作成過程を用いたイメージ動画も作成し、メディアやHP・SNSなどを通じた法要の周知も行われました。名古屋市の中心部に位置するお寺である名古屋別院。街の誰もが参加できる法要であることを多岐にわたる分野の方々と関わりながら、地域あげての法要となるよう準備が進められていきました。
■重点を変えて前期と後期で勤めた御遠忌
名古屋別院だけでなく、組でのお待ち受け大会や行事が次々と重ねられ、いよいよお迎えした御遠忌は、願いを具体的に表現するため前期と後期にわけてお勤めされました。
◇前期 2016年4月22日~24日
現代におけるお寺の在り方やその可能性を模索しながら、これまでお寺になじみの薄かった方々にも気軽に足を運んでもらうことを願いに、一般参加を促す行事が数多く企画されました。
とくに、若い世代に訪れやすい縁日として2013年から始まった「東別院てづくり朝市」は、近隣の浄土真宗本願寺派本願寺名古屋別院(西別院)を含めた「寺内町」へと輪を広げ、「別院てづくり縁市」として子ども連れの家族や若い人が大勢境内に訪れ、本堂への参拝を促したそうです。本堂への参拝が初めての方も多く、「入ってはいけないところだと思っていた」という声も聞かれ、暮らしの中で気軽に足を運ぶことのできる場であるというメッセージが伝わる様子がうかがえました。
◇後期 2016年4月26日~5月1日 五昼夜(6日間)
後期は、“伝統法要”が勤修され、団体参拝の受け入れが行われました。法要に加え、一般参拝枠で奉仕研修が企画され、お参り、境内散策、座談会が行われました。御遠忌は、お参りし、聞き、出あい、語り合う機縁であるということに立ち返り、本多弘之氏、亀井鑛氏に加え、作家の高橋源一郎氏を招いて行う「公開座談会」を開催。宗祖親鸞聖人の歩みにともに学ぶため、「ともに生きる-いのちのつながり―」をテーマに、いま、ここに、このように生きる私自身をともに考える時間が、本堂を会場に設けられました。
法要では、団体参拝の配布物として、法要の次第、儀式の意味、法要一口メモ(豆知識)、お勤めするお聖教・和讃・御文とその意訳を掲載したパンフレットを法要毎にわけて作成されました。
パンフレットを見ると、これからお勤めする法要のすべての流れが詳細に掲載されています。サイズはA4版、どの年代の参拝者にも見やすいよう大きな字で表記。普段のお勤めで見慣れている『大谷声明集』(法藏館発行)を参考にしたそうです。
法要でのパンフレットの配布には、「お勤め中に“読書”するのはいかがなものか」という意見や、「境内にお聖教が掲載されたパンフレットが捨てられたりしないだろうか」といった参拝の在り方やお聖教の扱いを危惧する意見も検討されました。それらのことに極力配慮し、より多くの方に積極的に法要に“参加”してほしいという願いから、法要の流れにあわせ、声明として声に出す文言と、その意味と内容を同じページに併記する等の工夫がされました。
長時間に及ぶ法要への参拝、そしてそのお参りを通して教えに出あっていくこと。“伝統法要”をいかに相続していくのかということが課題になったそうです。
儀式の意味や意訳は、編集を担当した御遠忌「行事部」委員により作成され、和讃や御文については、その日の法話を担当される方を中心に執筆を割り振られたそうです。
また、『正信念仏偈』の説明は伊東恵深氏(同朋大学専任講師※当時)に執筆を依頼、『阿弥陀経』や『歎徳文』、『報恩講私記(式文)』などについても説明を従来からの宗派内の刊行物を用いて逐一掲載し、意味を理解していただくことで御遠忌の法要に込められた願いが参拝者に伝わるように工夫されていました。
法要毎に、参拝者数に合わせて各1500~2000部、全10種類のパンフレットが配布され、「見やすい」「お勤めしやすかった」と好評だったそうです。掲載許可や、見やすさの重視、わかりやすい意訳や説明を、全10種類分そろえるのは、実際にやってみないとわからなかった苦労があったそうです。しかし、御遠忌テーマにあるとおり「ともに」堂内全員でお勤めし、各々の家に持ち帰り、御遠忌を思い起こしながら改めてご家庭で聖教の願いを考える。その流れを作ることで、単なる大きな行事として終わらせるのではなく、次世代につながれていく御遠忌になったように感じられる取り組みでした。
(おしまい)
(文責:企画調整局)
■参考