伝道掲示板
スイーツは別腹 いいえ
腹は一つで 欲は底なし
(宗專寺住職)
交差点の掲示板
宗專寺の掲示板はお寺から二十メートルほど離れた交差点にある。数年前、道路と交差点が新設されるのと同時に位置を吟味して設置した。「ねらいは、ぴったりだった」と住職。そのねらいとは、「車で信号待ちになった時に、ふと見ることができるように」である。
反響は大きく、時にはミニバイクの若者がスマホカメラで掲示板を撮る光景も目にする。また、掲示板の写真がSNSにあがっていることもあり、「こちらが思わなくても宣伝してくれる」という。掲示を始めてすぐに、「月一回ではなく、もっと頻繁に変えてほしい」との声があがり、早い段階で半月一回更新に変えた。
掲示内容は、「➀念仏の教えをなるべく平たい言葉で ➁季節・時期を捉えた言葉 ⓷政治について黙っておれないこと ⓸生活の中のこと」、これらのことを念頭に、平素生活する中で閃いたことを練って言葉にしている。「掲示をしていて面白いのは、人によって反応する言葉が違うところ。あの言葉にこの人が反応するのかとびっくりすることもある」という。
あらためて掲示板の役割について尋ねると、「コロナによって法座が開けなくなり、発信する機会が減ったが、おかげさまでメッセージを発信でき、お寺の存在感を保てている。本当にありがたい」と語ってくださった。
住職としての日常は、「お寺で法務をするよりも、ジャージと薄汚れた服で草刈をすることの方が多い」という。実際、春から十月までは、ほぼ毎朝二、三時間の草刈をする。そんな日常を送る中で浮かんだ言葉に、「今日もフカすぜ 俺のスチール 刈払い」(「スチール」:草刈機のメーカー)がある。「これから草刈などの作業が大変になる季節だけれども、みんな頑張ろうよ」とのメッセージがこめられ、これまで掲示した中で住職が気に入っている言葉だ。
宗專寺のホームページにはこれまでの掲示内容が掲載されており、見ていると、どの言葉も自然に目が留まり、関心が向く。「いつでも掲示板のことが頭の中にある。そのくらい思っていないと閃かない」と住職が語るように、時間をかけて生み出された言葉だからこそ、見るものが引き付けられるのかもしれない。今の時代において、掲示板の可能性はまだまだあるのだ。
(京都教区通信員・岡本大志)
『真宗』2021年10月号「お寺の掲示板」より
ご紹介したお寺:京都教区出雲組(住職 和多田 禎哉)
※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。