真宗大谷派(東本願寺)では、宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃事業の5つの重点教化施策の一つとして、「真宗の仏事の回復」を進めています。これは朝夕のお勤めや報恩講をはじめ、通夜・葬儀・法事などのあらゆる仏事が、御本尊を中心とした仏法聴聞の場として回復していくための取り組みです。ここでは各教区の動きを紹介します。
《長浜教区における仏事の現況と背景ならびに今後の展望》
長浜教区では、2019年度より4年かけて「葬儀式」に焦点を絞り、仏事の回復を視野に入れた学習を行っています。(これからの仏事を考える学習会「葬儀式に学ぶ」①はコチラ)親鸞聖人のお念仏の教えに対する信仰心が篤い土徳ある湖北の地域でも、年々仏事の縮小や教えの希薄化が悩みの種となっております。あわせて、墓じまいや仏壇じまいなど、仏事の相続等が危ぶまれてきていることは否めません。また、コロナウイルスの感染拡大により、すでに我々の意識の下でひしひしと蠢(うご)めいていた、仏事の簡略化なる意識が表出してくることなど、仏法の法灯が消えてしまう危機感を抱く昨今であります。
2019年度はコロナウイルス感染防止の為、やむなく研修会を休止しましたが、2020年度は当初より講師として依頼しておりました、狐野秀存氏(大谷専修学院長)に出向いただき研修会を開催することができました。(学習会のチラシ)
《研修会の位置づけ》
当研修会は、単に講師の研修を受けるだけにとどまらず、自主輪読会にて出された意見、疑問などを事前に集約し、随時講師に伝達。そして、その内容を事前にご確認いただき、返答いただく「双方向型研修会」を目指し開催しました。主体的に学びたいと参加いただける方と、純粋に研修会を受講したい方など、門戸を広げ学ぶ場が開かれました。
《葬儀式に学ぶ研修会》
日 時:2021/5/26(水)19:00~21:30
会 場:大谷会館講堂(長浜教務所)
講 師:狐野秀存氏(大谷専修学院長)
参 加 者:31名
《開催された自主輪読会》
『浄土真宗の葬儀』(東本願寺出版発行)をテキストにして、毎回輪読箇所を定め、第1回はP46~57 「葬儀の習俗と真宗の葬儀」、第2回はP57~69 「葬儀の習俗と真宗の葬儀」を輪読し、座談会を行い仏事に対する素朴な疑問や意見交換を通して参加者同士で話し合いを行いました。
【第1回目】
日 時:2021/1/25(月)19:00~21:00
会 場:大谷会館講堂(長浜教務所)
参 加 者:10名
テキスト:『浄土真宗の葬儀』(東本願寺出版)
輪読箇所:「葬儀の習俗と真宗の葬儀」① P46~57
【第2回目】
日 時:2021/3/12(金)19:00~21:00
会 場:大谷会館講堂(長浜教務所)
参 加 者:11名
テキスト:『浄土真宗の葬儀』(東本願寺出版)
輪読箇所:「葬儀の習俗と真宗の葬儀」② P57~69
《座談会で話された声》
【火葬と土葬について】
今から60年以上前は、湖北では埋葬の形のほとんどが火葬ではなく土葬であった。やはり、金銭的なこともあり、火葬より土葬が一般であったと聞きおよんでいる。しかし、地域によっては火葬が主とされているところもあった。
【三番叟(さんばそう)について】
喪主が三番叟(白い装束)を着て、葬儀に出る風習があった。また、三番叟を着た人が、葬儀の最後に一番後ろに下がられて土下座をされていたという。土下座をされていた理由は、「これまでお世話になりました」という意味であり、また「お詫びする」ということと「御礼を申す」という二つの意味があったといういわれがあったと聞く。
【お悔みについて】
「お悔み」に伺うことは湖北では当たり前であり、遺族に対して「申しあげることはございません。(中陰を)お大事にお勤めください」と言うように教えられてきた。
【真宗の葬儀について】
葬儀を勤めるということは、昔から大変なことであったのではないか。今は、喪主をはじめ、遺族の考えとしては、経済的観念が強く、楽に簡単に送りたいという思いが強くなっていると思われる。最後のお別れである葬儀式を大切な仏事として受けとめず、結果的に仏事の形骸化を助長させている一面がある。縮小されている葬儀のあり方を考え直す必要があるのではないか。
【仏事としての葬儀式】
「迷惑をかけたくない」という故人の思いもあり、子や孫へ「自分の葬儀は簡単にすませてほしい」「今は、家族葬の時代だから、近親者だけで勤める」などといった、発想が強くなっている。また、葬儀社やテレビのコマーシャルの影響力も後押しし、残された者の葬送のこころが乏しくなってきておることに危機を抱くとともに虚しさを感じる。人生の節目としての式(仏事)を見直す時がきているのではなかろうか。
《全体をとおして》
継続して取り組んでいる当事業では、自主輪読会で出された意見(課題・問題・疑問)を抽出し、研修会でそれらの意見を確かめていく「双方向型研修会」が実現しました。特に、自主輪読会に参加された方は、講義でより深く課題を見直す機会が生まれたと思います。しかしながら、自主輪読会から参加されている方と、研修会のみ参加されている方との温度差があったことや、具体的な事例に対するディスカッションの時間が欲しいといった要望など、所管部門での総括反省作業を行う中で確認することができました。今後は、主体的に学んでいただいている方がお仲間をお誘いいただく流れの確立に向けた改善や、また、継続して取り組む大切さの広報伝達など、今後に向けて、更なる展開に努力していきたいと思います。
(長浜教務所)