伝道掲示板
ただ苦に逼められて
号き叫ぶ声を聞きて、
衆生ありということを知る
(『往生要集』)
新潟市内には信濃川と阿賀野川という大きな河川があり、その間に小阿賀野川という川が流れている。專念寺の掲示板は、その川沿いに面して建てられており、時折り散歩をする地元の人が、掲示板を立ち止まって見てくれることもあるそうだ。
近くに住む住職の友人は、ジョギングの際にいつも見てくれて、掲示板の言葉が変わると、それについて連絡をくれるそうだ。また、掲示板の言葉を変えていないとご門徒から「変わってないぞ」と言われ「やらなきゃ!」と自身を戒めることができるという。
「見てくれている人がいて、そして反応があると嬉しい。友人やご門徒からのリアクションは、掲示伝道を行う上で励みになっています。だから、自分もお寺の掲示板を見たら、書いた人にリアクションをしていこうと思います」。
專念寺の住職である田村大輔氏は、寺を預かる傍ら臨床心理士として市内の児童養護施設に勤務している。子どもたちからおもしろかったマンガや小説を教えてもらい、その中から掲示板の言葉にすることもあるのだという。取材した日の掲示板は、僧侶であり児童養護施設園長であった祖父江文宏さんの言葉だった。子どもの目線に立った言葉選びを掲示板から感じた。
また、田村氏は組の教化委員として掲示伝道部門の幹事を担い、部門のスタッフと共に、法語ポスターなどを作っている。
「掲示板の言葉がきっかけとなって、お寺の掲示板を見てくれた人と会話をしたり、掲示伝道部門のスタッフと話し合ったりができる。そこから、お寺に関心を持ってもらったり、お参りする縁になっていく感じがします」。
專念寺に掲示板が建てられ、言葉を書き始めたのは五年程前。ちょうどその頃、推進員の後期教習で行った本山の同朋会館で見た掲示板の言葉に出会い、感動したという。そこには源信僧都の『往生要集』の言葉が書かれており、田村氏にとって今でも忘れられない言葉になっている。
「掲示板の言葉には、選んだ人がその言葉に出会い、いいと思った「背景」があるはずだから、そういうことを大事にし、見て伝えていきたいと思います」。
最近では、ご門徒の法事の度に式次第を作り、そこに今月の掲示板の言葉も載せるという形で、お参りされた方たちに直接言葉を伝えている。
今回の取材を通して、お寺からの発信がきっかけとなって、一人でも多くの人が心に響く言葉に出逢ってほしいと思った。
(三条教区通信員・関 彩子)
『真宗』2022年1月号「お寺の掲示板」より
ご紹介したお寺:三条教区第二十組(住職 田村大輔 ※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。