2022年4月16日、加賀市大聖寺にある毫摂寺で大聖寺地区の花まつりが開催されました。この花まつりはお寺の横の繋がりを広げようと2021年に大聖寺地区にある四つのお寺の次世代の有志によって立ち上げられました。今回はこの花まつりの幹事を務める毫摂寺の出雲路(ただし)さんと本善寺の飯貝宗淳さんにお話を伺いました。

お勤めの様子

花まつりをはじめようと思ったきっかけ

きっかけは本善寺の飯貝宗淳さんの「お寺の横のつながりが少ないよね」という言葉でした。

ひと昔前まで、大聖寺教区内では葬儀に行くと地域のお寺さんが諷経参りなどで顔を合わせることが多く交流がありました。しかし家族葬や葬儀の縮小化の流れの中、他のお寺さんと会う機会が少なくなり交流する機会が少なくなってしまいました。また普段それぞれのお寺で28日の宗祖御命日のお参りなどはあるものの、それぞれのお寺に足を運ぶというようなことはほとんどないというのが現状。そこで、「もっと気軽に行き来できるようになれば」と思うようになったそうです。そこでお寺を担う若手の有志で食事会などを開催して相談したところ、一緒に何かできないかというところから毎年宿寺を交代して花まつりを開催しようということになったといいます。

花まつりを選んだ理由についてお聞きする出雲路雅さんは、「昔は大聖寺の街中に教務所があり、花まつりの際は街の中を子ども達が白象を引きながらパレードをしていました。そのことを覚えている門徒さんが多く、もうやらないのという声をよく聞くことがあったので花まつりを開催することにしました。また普段開かれている同朋の会やお講などへの参加はなかなかハードルが高い、若い世代にも馴染みやすいのではということもあり気楽に来て楽しんで頂けたらという思いもありました」。と話されました。

久しぶりに大聖寺地区で花まつりをすることでお寺を超え、世代を超えて昔体験した人も初めてみる人もお寺を縁としてさまざまな人びとが訪れました。

当日の様子

大きな白象のバルーン

まず印象的だったのは全長2メートルほどある大きなバルーンの白象。来年はこの白象で大聖寺の街をパレードしたいとのこと。他では見られない大きな白象に子ども達は触ったり記念撮影したりと興味津々でした。

花まつりの開催にあたりコロナ感染対策として展示形式をとり、いつ来てもいつ帰ってもよい環境づくりを心がけ一ヶ所に留まらない工夫がされていました。

まず10時より「正信偈」のお勤めから始まり、その後は自由に見てもらう形となっていました。本堂正面には灌仏があり甘茶をかけてもらったあと坊守さんからお菓子をもらいます。

灌仏する子ども達と出雲路雅さん
自作の花御堂

他にミニゲームコーナーでは阿弥陀仏が描かれた台に5回ボールを投げてその点数の合計点をホワイトボードにかき出していました。簡単なゲームなので子ども達だけでなく世代を超えてみんな楽しんでおられました。

ゲームコーナー。点数が高いほどボールを乗せるのが難しい
ポイントの高いところを狙ってボールを投げる子ども達

またパンフレットの裏には白象の塗り絵があり、塗り絵をするコーナーも設けられていた。この塗り絵は、当日来ることができない人も事前にお寺に持って来てもらっていたそうで、当日ボードに貼り出してありました。出来上がった絵は大聖寺教区広報のYouTubeチャンネルで紹介されています。花まつりが終わったあとも自分が描いた絵やみんなが描いた絵を見て楽しめるようになっています。

ぬりえを楽しむ様子
色とりどりの個性溢れる象

もともとは集まった子どもたちとゲーム大会などの催しを考えていましたが、密になってしまうためにコロナ対策として展示形式をとりました。しかし結果的にいつ来てもいつ帰ってもよい場となり入りやすく出やすい状況であったため子ども達だけでなく世代を選ばず参加しやすい催しとなりました。

参詣者の声

        甘茶のコーナー

子ども連れの若い人から昔子どもの頃に見た花まつりを懐かしんでこられた年配の方々など世代を越えてさまざまな人達が訪れていました。中には子どもの頃に飲んだ甘茶が美味しかったことを思い出してペットボトルで甘茶をもらいに来られた方もおられました。お寺の手つぎの垣根を越えての開催だったこともあり地域の門徒さん同士の間でも久しぶりに会ったという方もおられたようで、地域の交流の場ともなっていました。

お孫さんたちと訪れた女性の方は「自分たちが子どもの頃に経験したことを今の子どもたちと共有できてとても良かった」と言っておられました。


出雲路雅さんは「続けて行くことが大事なこと。一人では子ども会や花まつりを開催するのは難しいと感じる人も共に協力することで開催できます。そうすることで長く続けていくことができるのではないでしょうか」また「大聖寺地区ではお通夜の時に参詣の方も一緒に「正信偈」を唱和することが多いのですが、それは昔日曜学校や花まつりなどでお寺に来ていたからです。しかし正信偈が読める世代も大分少なくなっています。今が共に唱和できる最後の世代とも言われています。今まで相続されて来たお念仏の教えが途切れそうな時代に、花まつりを開くことで少しでもお寺に興味を持ってもらうきっかけとなって良かったと思います」と話されました。

また飯貝宗淳さんは「今の時代お寺だけで生計を立てていくのは難しい寺院も多くある。兼業で他の仕事を持たざるを得ない寺院がある中で、お寺同士がお互いに補い合うことも必要な時代になってきた。今回の花まつりの企画や準備をとおして普段接点の少ないお寺同士のつながりが築かれてきている。花まつりをきっかけとして気軽に話し合える場が持てるようになったことを大事にしたい」と話されました。

お寺は開かれた場であると言いながら実はお寺同士のつながりは希薄であり、手つぎの門徒の中だけで行事が行われていて、閉鎖的な雰囲気があると感じていました。今回の取材をとおして、協力して花まつりを企画し、開催する中で手つぎの垣根を越えて「共に」という場が開かれるきっかけになったのではないかと思いました。

(大聖寺教区通信員 山本証真)