取材当日は、隨法寺の月一回の仏華講習会の日。仏華講習会は1995(平成7)年から始まり、自坊の報恩講の仏華は、講習会で学んでみえた方と住職と坊守とで立てることを今日まで続けておられます。
住職の阪圓成さんがお寺で仏華講習会を始めたきっかけは、1998(平成10)年に「蓮如上人五百回御遠忌法要」と「本堂修復奉告法要」を勤めるにあたり、御門徒の方たちと一緒に仏華を立てたいと考えたからです。たまたま身近に仏華に携わっている方がおられたので、講習会の先生を依頼して始まりました。仏華の基本を教わり、セオリー通りに進めると気持ちの良い、綺麗な仏華を立てられることを皆で学び、そして参加者全員で御遠忌法要の仏華を立てられました。
当初参加者は40名程おられたそうですが、今では参加者も高齢となり、数名の方のみとなっています。2004(平成16)年に先生がお亡くなりになってからは、住職と坊守が中心となって、先生に御指導いただいたことを皆さんにお伝えし、一緒に仏華を立てて楽しんでいます。
仏華講習会では、参加者の方たちは自宅の御内仏の花瓶を持参し、立てる仏華の花や木を自分自身で調達しています。その横で、住職と坊守も同じように立て、お互いの仏華を観賞し、認め合いながらひとときの時間を共有しています。
仏華講習会で共に学んだ御門徒のお宅へ住職が法務に行き、その方が立てた仏華を見ながらお勤めをしていると、「法要の準備で忙しく、手間暇かけた仏華を立てることができなかったので、見ないで欲しい」と、ニコッと笑いながら仰います。その反対に永代経の仏華は住職が立てるので、御門徒の方は仏華と住職の顔をかわるがわる見てニコッと笑われます。「住職さんも手を抜いたな」と、お互いに仏華を通して、「忙しい時は手間暇かけてうまく仏華を立てることはできんよね、あんたもそうか、私もそうや」と共感できる住職と御門徒の関係性。御門徒の方は「見ないで」と仰いますが、本当は見てもらえることが嬉しいようです。お互いにがんばりを認め合うところに意義があるのではないでしょうか。そういう人間関係が素晴らしいと、住職と坊守が声を揃えて仰っておられました。
「仏華は奥が深いので、簡単に覚えることはできません。コツコツと地道に続けながら、怒られながら、右往左往して立てているうちに、ふと気がついたら身についていました。最初は材料の花や木を山ほど切って集めていましたが、切る時にむやみやたらに切るのではなく、本当に必要な枝だけを選んで切れるようになりました。これは日常のことや人間の生き方に通ずるのかもしれない」という住職の言葉が耳に残りました。
仏華を通して、自分の生き方が浮き彫りとなり、問われ、阿弥陀さまから願われている私なのだと考えさせられながら帰途につきました。
(三重教区通信員・山田有維)
『真宗』2022年7月号「今月のお寺」より
ご紹介したお寺:三重教区三重組(住職 阪圓成)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。