寺院活性化支援員を派遣して、お寺の現状や課題、要望をていねいにお聞きし、寺族と門徒と一緒に教化の取り組みを考える〝寺院活性化支援室 過疎・過密地域寺院教化支援”
真宗大谷派(東本願寺)では、宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃法要をお迎えする2022年度までの4年間、慶讃事業の重点教化施策の1つである寺院活性化の取り組みを推進してまいります。
寺院活性化支援室 過疎・過密地域寺院教化支援では、真宗の教えとの出遇いの場、寺院が共同して聞法の場を開く取り組みが推進されることを願い、地域連続法話会の開催に対しての助成を行っています。
東北教区山形第7組「三カ寺連続法話会」開催!
【山形県村山市と尾花沢市】
国で定めた「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」によると、山形県では、35 市町村のうち 21 市町村が過疎地域となっており、過疎地域が県全体に占める割合は市町村数では6割、面積では約7割を占めています。村山市と尾花沢市もそのうちの全部過疎の市町村にあたります。
村山市は山形県の中央部に位置し、東を奥羽山脈、西を出羽丘陵に囲まれ、村山盆地の北部にあります。市の中央部を日本三急流の一つである最上川が蛇行しながら北流し、流域には肥沃な大地が開けています。東に甑岳(1,016メートル)、西に葉山(1,462メートル)を仰ぎ、足元には田園風景が広がる自然豊かな地域です。人口は22,004人・7,997世帯(2023年5月1日現在)
尾花沢市は、山形県の最北東に位置します。標高は70mから1,500mと起伏に富み、奥羽山脈や出羽丘陵などの山々に囲まれた盆地を形成しています。・面積:372.53平方キロメートル(県面積の約4%を占める)・東経140度25分、北緯38度37分
短い日照時間と低温、多湿、多雪のため、春の融雪が遅く、農耕期間が短いのが尾花沢盆地の特徴です。冬の季節風が月山や御所山等の稜線にさえぎられ、雪を多く降らせるため、平野部でも積雪量が2mに及ぶことがある豪雪地帯です。人口は14,238人・5,232世帯(2023年5月1日現在)
【開催のきっかけ】
少し早い春の到来を感じた今年の3月。豪雪地帯である山形県尾花沢市を中心とする山形第7組では、まだ雪が降る中、3つの組内寺院を会場に連続法話会が開催されました。
組内の12カ寺は全て過疎地域。聞法の歴史の深い地域であることから組内で協力しながら聴聞の場が引き継がれてきましたが、遠方からの講師をお招きしての聞法会や研修会は1つのお寺は開催が難しい状況にありました。
こうした状況で、組門徒会員の森孝司さんが、寺院活性化支援室の「過疎・過密地域寺院教化支援」の助成を受けての「地域連続法話会」の開催を組内で提案されました。提案までには、本山に来られた際、またお電話、メールにて施策の概要と目的や開催の仕方を何度も確認されていました。
「地域連続法話会」は、3カ寺以上の寺院が共同して同朋の会や法座を開き、同一講師が連続して出向する形で開催します。
今回は、京都在住の尾花沢市と縁の深い鈴木君代氏(山形第7組念通寺衆徒)を講師、意運寺、無量寺、念通寺を会場に法話会、そして日程中に組外の方々にも参加いただけるよう、公開講座を連続しての開催が企画されました。
【どのように地域連続法話会を行う?】
3/18(土)9:30からの意運寺(尾花沢市)に始まり、午後からは公開講座。3/19(日)10:00からの無量寺(村山市)、14:00からの念通寺(尾花沢市)で締めくくります。
お彼岸の時期に合わせて開催することで、地域の人々に集まってもらいやすいよう日程を決め、チラシを作って案内を行いました。
寺院それぞれの人数が少ないため、各法話会には組内の僧侶・門徒がスタッフとして巡回しました。
今回は、歌と法話でお念仏する身であることを共に感じる時間にしたい、ということで音響設備が必要になります。
音響のスタッフは、組内の淨榮寺門徒である高橋一泰さんが担当し、本堂内での音響設備の設営・確認や演奏中の調整なども行います。これにより、日ごろは音響設備を扱ったことのない寺院でも安心して会場の準備を行うことができました。
映像記録は、組内淨願寺門徒の二藤部真一さんが行い、各会場を巡回しました。
写真も各会場の撮影に長けた門徒さんや、僧侶が担当し、組内全体で全会場を支える形で運営されていました。
【2023年3月18日9時30分~ 意運寺】
山形第7組の連続法話会は、尾花沢市の意運寺さんからスタートです。
20年前、鈴木君代さんの歌声に感動されたご門徒が待つ意運寺さん。
住職の奥山賀子(よしこ)さんの住職就任式では、鈴木君代さんがミニコンサートを開いて、地域の方々と一緒にお祝いをされたそうです。
意運寺では、数年前より「又、君代さんの歌を聞きたいね!」という門徒さんからの声があって、組で連続法話会の話があったとき、奥山住職は「これはご縁だな!」と思われたとのこと。
意運寺では、地域の皆さんにチラシ配り「歌と法話のコンサート♬」として開催され、本堂にはたくさんの感動と感謝の声が生まれていました。
【2023年3月19日10時~ 無量寺】
企画を提案した森孝司さんの所属寺は、2つ目の会場である無量寺。無量寺の彼岸会としての開催。
無量寺は組内の喜覺寺住職である金森了司さんが無量寺の代務を務めており、住職が不在のため、同朋の会などの聞法の場は、無量寺の門徒が中心となって開かれています。
無量寺の代務を務める金森さんは、「無量寺さんは、僕が来る日も調声は門徒さんたちがします。企画も案内も設営も片付けもすべて。門徒さんが一生懸命に守っているお寺です」とおっしゃいます。
閉会後、本堂を後にされる人に「同朋新聞」を手渡していく門徒さんの姿に、この地で聞法の場がつながれてきた歴史を感じました。
【2023年3月19日14時~ 念通寺】
続いて、午後からの念通寺が「三カ寺連続法話会」の最後の法話会。
念通寺も、前住職が急逝されたことで、門徒と現坊守、住職との結束がつよく、お寺の歴史をつないできたと、総代の鈴木徹さんに伺いました。受付や写真撮影、進行も念通寺の門徒さんが行います。
総代の鈴木さんは、今回の連続法話会の企画を提案した森孝司さんから相談を受けたとき、「ぜひやってみよう!」と思われたそうです。
念通寺の住職である、花邑広祥さんも「新型コロナウイルスの影響もあり、なかなか集まることができなかったので、三カ寺合同で企画しようという話になり、各会場こんなにもたくさんの人が集まってくれてうれしい。音楽と仏法を聞く場ができた。本山の助成を受けて、こんなに大きな連続の企画を実施できた」とあいさつの中でおっしゃいました。
【企画を提案した森孝司さんにインタビュー】
企画を提案した森孝司さんに、「三カ寺連続法話会」実施後の感想を伺いました。
森孝司さん:まず、無量寺でいうと、なかなか遠くの講師は呼べずにいました。とくに、わたしのお寺は門徒同士が協力しあってささやかに営んでいるので、組内の住職に協力してもらいながらご法話を聞いてきました。
山形教会の報恩講にも、団体参拝するなどしてやってきましたが、自分のお寺で、いつも聞くことができない講師が本堂にきて、その法話をこのお寺の門徒が集まって聞くことができてうれしいです。
また、今回助成を受けて実施したのは、この山形第7組に縁の深い僧侶である鈴木君代さんの法話を組内の仲間に聞いてもらいたいと思ったことも理由にあります。縁は深いですが、遠方で一つのお寺ではなかなか呼ぶことができない。でも、組内12カ寺のすべてが過疎地域にありながらも、協力すれば何かできるんじゃないかなと思いました。スタッフとして組内の住職・僧侶・門徒が結束できたことも良かったですし、公開講座も連続法話会の日程に入れたことで、他の組の門徒さんが聞きに来てくれました。そこでまた新たに他の組の公開講座に誘われ、組を超えた交流も生まれました。そういう広いつながりが生まれたことが成果だったと思います。教化事業の際はまた声を掛けて欲しいとリクエストまでいただきました。
法話会の聴聞者は3ケ寺で170名、法話会に併せて開催した公開講座には、他組寺院から住職さんが引率しての参加もあり200名を超え、御同朋御同行を感じる集いとなりました。私の手次寺無量寺では、歌を交えた法座は心に深く響くのでしょう、身を乗り出して聞き入っている人が多く見られ、最後の法座となった念通寺では、鈴木君代さんも休憩時間も返上しての熱い歌と法話の時間でした。
この度の法話会をステップにして、山形第7組の活性化、教区の活性化に取り組んで参りたいと存じます。ありがとうございました。
今年度お勤めされた 宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃法要を機に設置された過疎地域への教化事業への助成。
助成はあくまで一つのきっかけにすぎません。しかし、東北教区山形第7組では、過疎・過密地域寺院教化支援をきっかけに、組、寺院、門徒それぞれの聞法の歴史の中に、新たな「交流」を生み出すことになりました。