民藝とは民衆が日々用いる工藝品との義です。(中略)それ故民藝とは民器であって、普通の品物、すなわち日常の生活と切り離せないものを指すのです。

それ故、ふだん使いにするもの、誰でも日々用いるもの、毎日の衣食住に直接必要な品々。そういうものを民藝品と呼ぶのです。

したがって珍らしいものではなく、たくさん作られるもの、誰もの目に触れるもの、安く買えるもの、どこにでもあるもの、それが民藝品なのです。

(柳宗悦『民藝とは何か』)

福光に疎開していた棟方志功の招きで南砺に滞在した柳宗悦ですが、棟方とともに熱心に法話を聴くようになったといわれています。そして、城端別院善徳寺に古い和讃があると聞き訪ねます。

どんな姿のものが現れるのであろうか、永年の期待が瞬間に満たされるのである。だが何たる冥加であろうか。それは夢想だにしなかった驚くべき版本であった。凡ての期待は尚小さすぎた。(中略)私は思わずも感嘆の声を放った。こんなにも美しい版本を生まれてから見た事がない。(中略)色紙の和讃に私の心は憑かれたものの如くであった。(中略)それは信心が美しくさせた本なのである。それは帰命する者が求めた荘厳なのである。書物にも浄土相を宿そうとしたのである。それ故美しさと厳かさを一身に兼ね備えているのである。こんな本が他にそう見出せるであろうか。

(柳宗悦『蒐集物語』「色紙和讃に就いて」)