「九州教区ハンセン病問題全国交流大会」から始まる歩み

九州教区ハンセン病問題部会 田中 一成

  

 九州教区では、去る2023年4月25日、26日の2日間にわたり、「ハンセン病問題の教訓は生かされているか─感染症流行を経て、今問われていること─」の大会テーマのもとに「真宗大谷派九州教区ハンセン病問題全国交流大会」を開催しました。私たちがこの大会の開催に向けて歩み始めたきっかけは、まだ九州教区になる前の2019年に富山で開催された「第11回ハンセン病問題全国交流集会」へ、菊池恵楓園の入所者の方々をお誘いするため「ハンセン懇」第五連絡会として訪れた時に、「遠方への旅行は行く自信がない」と言われ、「それなら次に恵楓園で開催したら一緒に参加できますね」と盛り上がったことからでした。

 大谷派として次回の全国交流集会の予定はないということでしたが、2020年度から九州教区が発足することや、九州・沖縄には、菊池恵楓園、星塚敬愛園、奄美和光園、沖縄愛楽園、宮古南静園と5つの療養所があることをふまえて、どうにか九州教区の主催という新たな形で開催できる道を探りました。当初、菊池恵楓園をメイン会場にして、全国から参加者を募り、実際に会って交流することを願いとしていました。しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起こり、全国の療養所への出入りが難しい状況となりました。そこで、オンラインを活用し、市内のホテルをメイン会場とすることにしました。会の名称も、集まって交流する「交流集会」ではなく、リモート交流も含むということで「交流大会」となりました。

 困難な状況の中、全国の各療養所と交渉して、リモート交流の手配や、ビデオレターを撮影してくださった「ハンセン懇」委員の皆様には感謝申し上げます。恵楓園の自治会長とは直接会ってお願いする機会を持てずにいましたが、開催1ヵ月前にようやく恵楓園の自治会に入れるようになり、会長、副会長お二人のリモート出演と、納骨堂の中での法要ができるようにご協力いただきました。メイン会場のホテルには100名程の参加があり、退所者や、家族の方々にも参加していただきました。

交流大会の様子

 一日目は、開会に先立って恵楓園の納骨堂で「慚愧の法要」が勤まり、ホテルの会場とリモート参加者へ中継されました。そこで「誓い」として、1996年の「ハンセン病に関わる真宗大谷派の謝罪声明」を全員で朗読し、大会が始まりました。納骨堂では、純白の骨壺が並んだ納骨壇の前で勤行があり、九州教区会議長が尊前で表白を読み上げました。

 法要が終わり、ホテルの会場での開会、リモート交流へと移りました。リモート交流では東北から九州、沖縄まで、それぞれの園の入所者の方から、園の近況や、これからの将来構想、宗教活動について話していただきました。

 入所者の方は、全ての園が、高齢化で介護が必要な人がほとんどとなり、介護施設で生活しているのと同じだと言われました。また、新型コロナ感染流行となってからは、外出もできず、外からの来訪者も来られなくなり、とても悲しい、そして、だんだんと入所者数が減っていく中で、最後の一人になることを考えるようになり、寂しさが大きくなると話されました。また、入所者が誰も居なくなってからの納骨堂を心配する声も多く聞かれました。

 また、厳しいご指摘もいただきました。「今大会のテーマ・ハンセン病問題の教訓は生かされているか・の・教訓・とは、ハンセン病問題を過去の問題として振り返る時に使う言葉であり、ハンセン病問題は未だ解決されていません。加害者である大谷派が「教訓は生かされているのか」というような立場をとるのは違うのではないでしょうか。国の巧妙な隔離政策と宗教による法話等によって、入所者の人たちは洗脳されてきて、この洗脳が今も生き続けている者もいます。「もういいかい 骨になっても まあだだよ」と詠まれた詩のような現実は今も続いているのです。このような現実を作り出してきたのは一体誰であるのかを考えてください。暁烏敏氏が慰問布教で説かれた「あなたたちがここ(療養所)に静かに居ることは、第一線の兵隊が砲煙弾雨の中に召されて征くことと同じであり、お国のためになるのです」といった内容の法話によって、ハンセン病の物故者をこの納骨堂に追いやってきた責任を、真宗大谷派はどうやってとられるおつもりでしょうか。各療養所の納骨堂からの「もういいかい もういいかい」という声にどうあなたたちは応えていきますか」という指摘でした。

 この声を聞いた時に、私はハッとさせられました。どこかでハンセン病問題を過去の問題としてしまっていないか。交流会で療養所の人たちにお会いすると優しく迎えてくださいますし、私にとっての療養所は居心地のいい場所となっています。だから療養所の人たちは、ここで最後までおられることは仕方がないこととしていたように思います。本当は入所者全員に帰りたくても叶わない故郷があって、会いたい家族や友人の記憶があるに違いありません。故郷へ温かく迎えられる状況となって、ハンセン病問題は解決されるのだと思います。「もういいかい、もういいかい」という声に、「まあだだよ、まあだだよ」としか応えられてなかったのではないか。簡単に応えがでることではありませんが、「もういいかい」という声を忘れないで、その応えを問い続けたいと思いました。

 2日間の交流大会で教区内外の多くの方が参加してくださいました。今回は入所者の参加はリモートに限られましたが、退所者や家族の方々も多数参加してくださり、交流の中で貴重なお話を聞かせていただきました。今後の交流の持続可能なあり方として貴重な試みとなったと思います。

 今年は7月25日に3年ぶりに恵楓園での盂蘭盆会を勤めることができました。入所者の方はお二人の参加でしたが、有志で呼びかけた10名ほどで納骨堂とやすらぎ会館での勤行となりました。今後は全国交流大会でできた繋がりを広げつつ若手の参加を呼びかけて、交流会と、納骨堂へのお参りを続けていきたいと思います。

  

真宗大谷派宗務所発行『真宗』2023年10月号より