桜も見ごろを迎える頃、仙台駅前から延びる宮城野通の、寺社が立ち並ぶ一角にある德泉寺を訪ねた。寺院の運営は住職の関口真爾さん、坊守の裕子さん、前住職の秀和さん、前坊守の幸子さんという四人体制で行っている。
現住職の真爾さんは十七代目で、父親である秀和さんが七十歳を迎えた頃に住職を継承した。二〇一四年の継承式の時には満堂になるほど人が集まったのを見て、「確かな指針があったわけではないけれど、お寺に期待して大事に思ってくれる人がこんなにもいて、これからはこの人たちと一緒にやっていくのだな、という覚悟ができた日でした」と当時の気持ちを語られる。
住職として、寺院の近況やお伝えしたいことが届かないということが少しでも減るように、ホームページと寺報を作成。ご門徒さんからはお参りに行けない時でも見ていますよ、読んでいますよという声をいただいており、届けたい人に届いていると感じているという。
毎月第二土曜日に開いている同朋の会は住職の祖父の代から続けている取り組みで、会の前半の法話を住職が、後半を前住職が担当し、終わりに茶話会をするという形式。参加者は二十名から三十名ほどで、毎回一名ほどは新しく飛び込みで参加される方がいる。仙台駅から近いこともあり、掲示板を見て参加される方もいるそうだ。
他の取り組みについて尋ねると「疲れの多い世の中なのでそれがちょっと楽になるような、疲れた人に楽しさが届く場所があると良いなという想いで企画をしています」と裕子さん。例えば、毎週木曜日と第二・第四日曜日に「寺子屋文庫」と題して同朋会館の二階を解放し、寺族の私物や寄付いただいた蔵書を読んでもらい、フリースペースとして活用してもらう企画や、「德泉寺子どもの集い」として夏と秋を中心に子ども会を開き、子どもたちの遊びの場を作るなど。広いスペースと駐車場、和室があるというお寺の強みを生かし、日頃のご縁の中で相談いただいたものを膨らませる形で計画しているそうで、取り組みの一つがさらに別の企画に発展することもあるという。
それぞれの取り組みの際には、なるべく住職の法話の時間もとることで、いのちの話を伝えるご縁となっている。「帰れる場所というのは浄土真宗でいえば阿弥陀仏の浄土になるのだろうけど、僕らの身近な所に軽く顔が出せて安心できる場所がある。そんな場所の一つになれたら」と想いを聞かせていただいた。
(東北教区通信員・藤原 了)
『真宗』2024年7月号「今月のお寺」より
ご紹介したお寺:東北教区仙台組 德泉寺(住職 関口 真爾)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しています。