大阪府堺市から奈良県葛城市へと至る竹内街道は、一四〇〇年を遡るその歴史から、「日本最古の官道」と言われる。その街道沿い、大阪府太子町に位置する正泉寺を訪ねた。その日地域では、毎年秋に行われ今年で十六回目を迎える「竹内街道灯路祭り」が行われていた。門から続く灯籠に誘われ、道ゆく人々が気軽に立ち寄って来られる本堂で、住職の秦井祥雅さんに話を聞かせていただいた。

 「普段の法務では関わることがない方でも、こういうお祭りの雰囲気の中で、お寺に入ってきてくださる。貴重な機会だなと思います」。

 そう語る秦井さんは、東京で会社員をしていた十六年前、母方の祖父から法灯を引き継ぐかたちでこの地に戻り、住職となった。それまで六十年間、教師をしながらお寺を守ってきた祖父の思いを知っているため、住職としての責任感は強い。

灯籠と正泉寺本堂
「うたごえの会」の様子

 「お寺の前を通る時に、手を合わせる方もいらっしゃる。そういう姿を見聞きすると改めて、大事にされている場所なんだなと実感します」。

 そんな住職は最近、門前の掲示板に意欲的に取り組んでいる。字に自信がなかったため最初は戸惑いもあったが、先生について書道を習い始め、少しずつ他のお寺の掲示板も参考にしながら書くようになった。「いつも読ませてもらってます、という声を聞くこともあります。やっぱり反応があると嬉しいですね」と微笑む。

 祭りでの開放の他に、正泉寺と地域のつながりを感じさせる取り組みとして「うたごえの会」のこともお聞きした。毎月一度、地元の企業が主催し、お寺を会場として開くかたちで、歌を歌いお弁当を食べるという催しである。「太子町を盛り上げる活動をしたいという思い」に賛同したという秦井さんも、その日は一参加者として歌うことを楽しむのだそうだ。

 お話の合間にも、本堂に入ってこられる方に挨拶し、お荘厳やお寺の歴史について丁寧に説明される住職の物腰の柔らかさがとても印象的だった。

総代さんと秦井祥雅住職

 「ここに住んでいると、山があって川が流れていて、自然の中に身を置くことができるので気持ちがいいんです。農家として土に触れている方も多い。そういう方々は、生活の中で、体を通して、大きないのちというものに触れておられるのだろうなと感じることがあります」。

 決して前のめりではない、あくまで自然体な住職の佇まいは、周りの方を安心させるようだ。奥様の理恵さんもそんな住職に「気持ちが穏やかで安定している」と信頼を寄せる。地域の中で、地域とともに息づいている人とお寺に触れさせていただいた。

(大阪教区通信員・高名 等)


『真宗』2025年2月号「今月のお寺」より

ご紹介したお寺:大阪教区第十九組正泉寺(住職 秦井 祥雅)※役職等は『真宗』誌掲載時のまま記載しております。