報告
東北教区教学研究所仙台分室への訪問
(三池 大地 教学研究所研究員)
教学研究所では、各教区にある教学研鑚機関に赴き、現状や相互の課題の共有を継続している。今回は、藤原智研究員と筆者で、二〇二四年十月二十九日から三十日に東北教区教学研究所仙台分室を訪問した。
東北教務所内で開催された仙台分室の定例月例会(共同学習)には、三県(宮城、福島、岩手)から研究員が参集する。そのため、一人でも多くの人が参加できるよう、会場にはオンラインの設備が整っていた。
研究員は四班に分かれ、順次『教行信証』に関する研究発表を担当する。班ごとに事前学習を行い、発表の折に出た疑問を話し合って次回に臨む。訪問した際の範囲は、「信巻」に引用される『涅槃経』の阿闍世の回心であった。
疑問を誤魔化したくないという発表者の思いは、聖教に対して誠実に向き合おうとする姿勢となって現れていた。「阿闍世自身は地獄に堕ちると想定していたのに、なぜ釈尊は阿闍世に仏性を得るとおっしゃったのか」などの問いが出され、座談では熟考する場面も見られた。懇親会でも話し合いは続いた。先輩方が築いてきた場は皆を自然と笑顔にさせ、気兼ねなく意見を交わせる空間となっていた。
翌日は、外部講師として二十年以上携わってこられた藤場俊基氏(金沢教区常讃寺住職)による、研究員の発表を受けての講義が行われた。参加者に言葉を投げかけて講義をする姿勢から、敬意のような心持ちが感じられた。
また仙台分室訪問にあわせ仙台市博物館で開催していた「親鸞と東北の念仏─ひろがる信仰の世界─」を拝観した。東北に伝わる光明本尊や教えの相承を示す先徳高僧連坐像や、民衆信仰を示すと言われる「まいりのほとけ」に関する本尊類が展示され、民衆の支えや信仰の豊かさを味わえる空間であった。
このたび仙台に赴くことで、様々な形となって表れている東北の歴史的伝統に触れることができた。今年(二〇二五年)は、東日本大震災が起きてから十四年が経つ。被災した方々、行方不明の人々や法宝物に思いを馳せ、先達の念願と仏法護持の伝統を憶念したい。
(教学研究所研究員・三池大地)
([教研だより(224)]『真宗』2025年3月号より)
